One Kiss！！…５

チャラくNIGHT？…１９７ ページ6

｢社長はそこから死にもの狂いの努力をされて、先代を始め幹部の方達から、流石だと認められるまでになられました…ご自分の全てを今の仕事に捧げられたのです、お若い時は宏光さんと同じ、お父様に反抗されて随分とやんちゃ坊主さんだったみたいですが…｣

｢そうなんだ…｣

｢ご自分と同じ立場、そして同じ振る舞いをなさる宏光さんを見ているのが、過去の自分を見るようでとてもお辛かったんだと思います、…キツく当たられたコトを正当化する理由にはならないかも知れませんが、どうか、お父様のお気持ちもわかって差し上げてほしいと思います…｣

赴任から２年目を迎えた頃…、兄貴の用事でシンガポール支社に来た星川さんと飯食ってる時にそんな話をしてくれた

｢親父は、今のオレをどう思ってんのかな｣
｢大変喜ばれておられます、口にこそ出しませんが、シンガポール支社からの報告は、毎日必ず目を通されています、会長職は受けられましたがもう一線からは退かれました、ですがシンガポールだけは今もその動向を見守られています｣

｢まあ、オレがいるんじゃ会長も心配だわなｗ｣
｢どうでしょう、会長の口癖は《それは宏光にさせればいい》ですが…｣

そう言って、星川さんは楽しそうに笑った

｢まあ…出来るだけ頑張るわ、あと3年だし…、あの、さ…｣

その先をどう切り出そうか口篭ったオレに、星川さんは《分かってますよ》と頷いた

｢凛堂寺…恙無くお勤めを続けていますよ、今の住職は京都の寺から来ています、檀家の評判も中々宜しい…宏哉さんがきっちりと凛堂寺をバックアップしています、太輔くんが戻るまであと一年…どうぞご安心ください｣

｢太輔は…本山でちゃんとやってんのか？｣
｢何も無いのがいい知らせなのだと思います、太輔くんの宗派は、本山修行の間は一切外界との接触を禁じています、私達も太輔くんが今どこにいるのかも教えてもらえないのです…例え宏哉さんを持ってしても然りです｣

｢そうか…｣
戒律が厳しいとは聞いてたけど、そこまでとは…

どうにかして様子を知りたいと思ったけど、それは無理なんだな…

思わずため息をついたオレを、星川さんは心配そうに見ていたけど、

｢お戻りになられる日を、本社一同お待ち申しております、お体にくれぐれも気をつけて…｣と残して帰っていった

手帳に挟んだ太輔からのメッセージ写真を見ながら、ふと笑顔が浮かぶ


ソレは《INTER》で被らせた桃の被り物を付けた太輔だった

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