One Kiss！！…５

チャラくNIGHT？…２０３ ページ12

｢もしお前が北山グループに利益をもたらす実績を残せたら、凛堂寺総代を任せる｣

シンガポールへの選抜試験を受ける前、兄貴から提示された条件…

檀家総代になれば、誰にも遠慮することなく公的に太輔を支えてやれる…

実の両親を亡くし、そして育ての親である住職とも別れなけれぱならなくなった太輔…それは、この由緒ある寺の全てが太輔一人の肩に任されるということだ…

助けてやりたかった…

助けられる自分になりたかった



太輔は強い、…そんな必要無いのかもしれないけど、アイツが苦しい時見てるだけの自分でいるのはイヤだった

シンガポールで、オレはガムシャラに出来ることを探し、スキルを上げ実績を作ることに集中した…限られた時間の中、誰よりも強くそして何にも負けない交渉力に磨きを掛けた


｢…よくやった、日本に帰ってこい…｣

兄貴からのその言葉に、ホッとしたと同時に身の引き締まる思いがした

やっと…会える…
遠回りした分、愛しさが募って仕方なかった


車の中…

｢とりあえず根回しはしておいた…だがな宏光、凛堂寺の檀家は日本でも一級品の家柄ばかり…その分プライドの高さも相当だ、あの人達と渡り合うのは相当の覚悟がいるぞ、凛堂寺はそこいらの並の寺じゃない、政治経済、私利私欲が絡んでくるかもだ、それだけは覚えておけ｣

｢…知ってるよ、リサーチ済みだ…｣

｢なるほど…ならオレが言うことはもう無い｣

｢オレへの風当たりの強さも承知してる…兄貴にも迷惑かける…ワガママ聞いてくれて、ありがと…｣

｢太輔くんと二人で寺を守れ…まあ、お前には本社での勤務もあるけどな｣

｢オレ戻るとこあんの？｣

｢ひとまず経営企画部に配属だ、そこからはお前次第…さっさとオレの右腕になれるように頑張ってくれよな？｣

｢了解！｣


────…



｢…宏光？｣

離れてた間のコトが、太輔を目の前にして戻ってくる、この場所は…大切な人の全てだ

｢…お前はこの寺に相応しい住職だ、オレの出来ることでお前を支える…この寺がお前の生きてく場所…そうだろ？｣

｢そうだ…｣

｢なら、その場所はオレが守る…住職と約束したからな…｣

｢……｣


｢忘れたか？…オレらを抱きしめて、住職が言った、最期の言葉…｣

｢覚えててくれてたんだ…｣


｢忘れねぇよ…《幸せになれ》…、お前の幸せは、オレの幸せ…お前が幸せならオレもおんなじ…この寺は、オレにもお前にも大切な唯一無二だ…守っていこうな…一緒に…｣

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