One Kiss！！…２

チャラくNIGHT？…６２ ページ14

｢藤ヶ谷太輔、…オレら前に会ったコトねぇか？｣

宏光の問いかけに、トクン…と胸が鳴る…


思い出してくれた…？

そうだよ、ずっとずっと…待ってたんだ…

すれ違いばかりの年月を重ねて、もう忘れられてると何度も諦めて…でも《もしかしたら》の微かな願いを捨て切れなくて…

４歳のオレは、《ヒロ》と呼ばれたその名前しか知らなくて、でも《また会おうね、ぜったい！》の言葉だけは、ずっと心の中に包み込むように残していた


やっと…伝えられる……


｢北山さん…それは……｣



｢太輔様、朝の勤行のお時間です、中々戻られないので皆が心配して待っております｣

いつの間にか宗純さんが竹垣の外にいた
引き戻される時間と、現実…

腕時計を見ると、五分過ぎていた
時間については皆に厳しくしている手前、これ以上待たせるわけに行かない

｢…あ、そうですね…すぐ行きます｣

花籠を手に取り、2人を置いて足早に本堂に戻った



｢北山、太輔様の手を煩わすな、花摘みすらマトモに出来ないのか？｣
｢は？トゲ刺さって抜いてもらっただけだろ｣
｢ふん、太輔様の気を引く為なら何でもアリなんだなオマエ｣

｢バカかよ、なんでオレがそんな…｣
｢さっさと俗世間に戻ればいいものを…邪な気持を太輔様に向けたらタダじゃおかないからな｣
｢邪って…ふざけんな、ねぇよ！…てかさ、ソレってまんまテメェじゃねぇのかよ？｣

コイツの太輔を見る目は、明らかリスペクト通り越してる…さっきも、ある種危うさすら感じる視線だ


藤ヶ谷太輔…お前大丈夫なのか？
こんなキケンなヤツを傍に置いといて…

そんな気持ちが湧き、無意識に宗純を睨んでいたんだろう
同じ顔して、オレを見下ろしてくる…

やっぱコイツ嫌いだ


｢必要以上に太輔様に近づくな！｣

吐き捨てるようにそう言うと、宗純は小道を戻って行った

アイツと同じ場所なんか戻る気もならず、オレは花畑に残り、さっきの感覚を手繰り寄せた



２０年以上前だよな…

母さんの…葬式……

オレを産んでから、母さんは体調を崩しがちになったらしくて、幼稚園に行く頃には入退院を繰り返していた

オレの覚えてる母さんは、いつも病院にいる人だった…

親父や兄貴と見舞いに行くと、ベッドに起き上がってホントに嬉しそうな表情をしてくれた…けど、子供心にも、母親の光に透けてしまいそうなほどの儚さを感じていた…


無意識に、オレは母さんと会える時間が残り僅かなコトを感じ取っていたように思う…

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