雪華 … Snow Crystal ７

Serenade：９ ページ10

宏光が学校に復帰してからも、何かと心配だったオレは、時々ニカ千宮に様子を見に行かせていた

｢専務、過保護過ぎですって！｣と言われながらも心配のタネは尽きなくて…


夏休みの今は、宏光はほぼ部活にかかりっきり、朝も早くから起きて着替えてオレの朝ごはんもまで用意してくれる、オレはそこまで早起きする必要は無いんだけど、宏光出ていく時に見送ってやる事が《何事も無い一日》へのジンクスみたいに思えて、眠い目を擦りながら起きて一緒に朝ごはんを食べていた

｢今日さ、秋からのレギュラー決める紅白試合させるんだ｣
｢へえ、なら部活メンたち戦々恐々だな｣
｢そだな、だから今日は責任重大なんだ、オレの時は二学期になってからだったけどな｣
｢あー、それで部活出禁食らうと困るってオレにムチャさせたのか｣

オレと宏光の間では伝説と化した《爆走チャリニケツ》、同時にその事を思い出して、同じタイミングで吹き出した


｢そうそう、あん時マジで助かった！オマエが救世主に見えたわ！｣
｢にしちゃ扱い酷かったけどな、早く早くっておま学チャリとオレの体力限界まで走らせたもんな、最後ゴジラの制止までぶっちぎらせるし、オマケに、到着したらそのままオレ放置されたし！｣
｢あっはっは、そうそう！｣

手を叩いて笑う宏光に、オレも笑みが零れる

｢…でも、あの日はオレの《必然》だった…オマエと出会う為の日…あの日は約束されてたんだと今でも信じてる…｣

｢…太輔…｣

｢あれは偶然なんかじゃない…今、こんな風に宏光と同じ場所で同じ時間を過ごすための《必然》…オマエに恋した瞬間…オレは今でも覚えてるよ…｣

たとえこの先…オマエに触れられなくても…あの瞬間の弾けるような笑顔と共に過ごした想い出があれば、この気持ちが色褪せることなんか絶対ない……

そうだろ…

｢2人でさ…ゆっくり…のんびり…幸せになろう…って、目玉焼き食いながら言うことじゃねぇか？｣

皿の上の目玉焼きに、フォークさしたまんまの宏光

少しだけ俯いて…オレの言葉を噛み締めるように
何度も…小さく頷いてくれた

｢…バッカ……目玉焼き…しょっぺえじゃん…おま不意打ち多すぎ…ッ…｣
｢お互い様だろ、無自覚ちゃん｣
｢ｸｽ…なんだソレ…｣

浮かべた涙はまだ拭ってやれないけど、胸の中では、いつもオレは宏光を抱き締めていた…


この先も宏光の進む道が、暖かく光差すものである様に…その笑顔が悲しみで覆われることが無いようにと願いながら…

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