雪華 … Snow Crystal ７

Serenade：８ ページ9

｢宏光、ただいま｣
｢おかえり！太輔｣

玄関入るなり、宏光はまるでご主人様の帰宅を待ってるワンコみたくリビングから転がるように出てきた

｢太輔、なあなあ聞いてくれよ、アイツらさぁ…｣

って、今日あった出来事をマシンガントークでしてくる、一週間ぶりの学校と部活は宏光にはかなり良き日だったしくて、生徒達とのおバカなやり取りとか、《ミカド》さんの天然ボケやらオレが部屋着に着替えてる間も、ベッド座ってご満悦な表情で話してくれた、相槌うたないと｢オマエ聞いてる？｣って確認してくるから、結構忙しいｗｗ

目を輝かせてニコニコ話してる顔が、オレにはホントに可愛くて嬉しくて、ついジーッと見つめてしまった、視線ぶつけ過ぎたのか話の途中で宏光がキョトン顔になる

｢え、なに？｣
｢ん、いや…めっちゃ可愛いなぁって思ってさ…｣
｢…ッ！？、な、…っおまバカじゃね？｣
｢ひでぇな、恋人バカ呼ばわりかよ？｣
｢こ、こいび…ッッ！？｣
｢アレ、違うの？｣

畳み掛ける様に確認すると、ｶｧ//…て頬染めて、｢ち、違うく…無い……｣てボソ返事してくれた、恥ずかしいからか身長差で仕方ないのか、上目遣いのチラ見が最強でオレは何も考えずに宏光に手を伸ばした

けど僅かに指先が触れた瞬間、弾かれたようにその表情は強張り、後退りをする…

そして、オレはリアルを知る
事態は何も変わっていないと言う事を…

｢メシ…食ったのか？｣

何事も無かったようにそう尋ねると、宏光の顔に明らか安堵の表情が浮かぶ

｢今日さカレー作った！オマエ帰ってくんの待ってたんだ、一緒に食べよ！｣
｢マジ？宏光作ってくれたの？｣
｢おうよ、オマエ家事能力ゼロっぽいからな、放っといたら外食ばっかになりそうだし、作れる時はオレが作ってやるから！｣
｢ウソめっちゃ嬉しい！｣

至って普通の会話…
それ以上踏み込まないための…踏み込ませない為の、暗黙のルールみたいなものがオレ達の間には出来てしまっていた…

これでいいのか…と、自問自答しても解決策などありはしない…

宏光が笑っていてさえくれば、オレはそれでいい…例えソレが、薄紙を隔てたような関係であっても、もう泣き顔は見たくない…

辛うじてネットに画像を上げる前に阻止できたのが唯一の不幸中の幸いだった

あの出来事を知っている者は多くはない…
大丈夫だ…


きっと上手くいく
必ずオレの手で幸せにするから…





事態が急変したのは
この日からそう遠くない暑い日だった

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