雪華 … Snow Crystal ７

Serenade：６ ページ7

｢じゃ太輔、行ってくる！｣

服着替えてリビングにいる太輔に声かけると、ソファで書類見てたけど、飲みかけのコーヒーをテーブルに置いて玄関まで出てきた

｢おう、気を付けてな、退院したばっかだしムリすんなよ｣

ネクタイ締める前のラフなシャツ姿…ボタンが深めに開けてるから首元から胸元への肌が見える…思わず目を逸らすオレに、太輔は何か気付いたようにさり気なくボタンを閉めた…少しだけ、オレと太輔の間に微妙な空気が流れる…何か、話さなきゃ…

｢…あ、オマエ迎え来るんだっけ…｣
｢ん？、うん、…二階堂が来るかな｣
｢そか、オレのコトでコッチに来ちまったから、なんかみんなに悪かったな…｣
｢いいよ、オレがそうしたいって言ったんだし…一人で行くのは構わないんだけど、お目付役がどうしてもダメだって言うからな…仕方ねぇな…｣

そう、太輔が置かれてる立場を考えればそうなるんだろう…オレといる時は高校の頃と変わらない素の《藤ヶ谷太輔》…けど、公にはコイツは《如月》の２代目になる、一般とはかけ離れた世界にいる人…

いつ、何があっても……

｢…太輔……｣

伸ばしかけた手が、空を掴む…

｢どした？…そんな顔して…｣
｢…なんでも、無い…｣

口ごもるオレに、太輔がクスっと笑い腕時計を見た

｢オマエ間に合うの？、もうオレ遅刻しそうになってもニケツできねぇかんな｣

ウインクカマしてくる太輔に、オレも《my 腕時計》に目をやると、《はああ？》な時間！？

｢え？…あ、うわっやっべぇッ！いてきま！！｣
｢行ってら！…久々の学校だ、楽しんでこい！｣
｢うんっ！｣

リュックを背負って出ていくオレ、出掛けに振り返ると太輔が笑って手を振ってくれる
ただそれだけのコトが、とても幸せに思えた

だよな、…太輔のコト怖いなんて…オレどうかしてたんだ…

病院から帰ったばっかだったし、事故とか…思い出せないことが多くて少し不安だっただけ…そうに決まってる

エントランスを出て、外の駐輪場に置いてあるロードバイクに乗って学校を目指す、実はコレ太輔からのプレゼント、《寝坊助宏光》の遅刻阻止が目的なのとなんつーか《同居記念》らしいｗｗｗ

赤色の車体は、軽くて軽快だ
夏色の風と光を突っ切って学校に向かう

今日も暑くなりそうだ
こんな日は、ある意味サッカー日和

ボールを追いかけてる時は、オレだけの《今》を感じれられる…


他に何も考えなくていい無心になれる時間…


オレの《原風景》が、存在していた

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