雪華 … Snow Crystal ７

君のいる世界 …６ ページ46

｢…宏光はどうしてる…？｣
｢太輔坊と睦まじく過ごされております｣

龍樹の淡々とした返答に、澤嶋一真は微かな笑みを浮かべた
｢…どういう事なの？北山くんは…アナタの息子なんですか？｣
ワケが分からなくて、私は二人に尋ねた

｢そうです、ですが宏光が２才になる前から会っていなくてね…｣

言葉を濁すような澤嶋の返事に、私は愕然となった…
｢…北山くんの父親がホントにアナタなら…アナタが太輔の…ッ、龍樹どういうつもりッ！？この人は太輔の父親を…｣
｢そうじゃない…、澤嶋さん、私から話してもいいですか…？｣

龍樹がそう言うと、澤嶋は少し考える様子を見せ苦しそうに目を閉じ頷いた

｢ユリ、澤島さんは元々《如月》で藤ヶ谷のオヤジさんの弟分だった、組内で起こった揉め事の責任を取らされて粛正処分にされる寸前だった澤嶋さんを助ける為に、関西の《十六夜》に行かせたのが藤ヶ谷のオヤジさんだ…｣

澤嶋一真は目を伏せ、龍樹に手のひらを向け話を遮る素振りを見せた

｢やはり私が話しましょう…その頃の藤ヶ谷さんは如月会長の信頼を一身に受けていた、双子の《太輔坊》を養子に出すほどにね…けれど私を助ける為にあの人がしたことは《如月》に取っては裏切り行為に等しい、《十六夜》に腹心を送りいずれ寝返る気だろうと勘ぐられ会長の信頼も《如月》での立場も一切失ったんですよ…さぞやお辛かったと思います、ですが彼はその事について私に何一つ言わなかった…全ての責任は自分にあると言って一線から身を引かれたんです｣

｢そんなコトが…？｣

｢私を《十六夜》に行かせる時、藤ヶ谷さんはこう言いました…『オマエは必ず《十六夜》で名を馳せろ、そしてもし《如月》と《十六夜》が全面対決になる時はその身を使って阻止しろ』と…『東西の雄がぶつかれば犠牲者の数は計り知れない、無駄な血は一滴も流したくない』と言っておられました…その言葉に従い、私は《十六夜》での確固たる地位を確立するためにあらゆる手を講じました…そして、その最たるものが恩人である藤ヶ谷さん自身を亡き者にすると言う最悪の結果を招いてしまったんです｣

｢それは…どういうコトなんですか…？｣

｢その頃の《十六夜》は、内部統制が聞かないほど荒れていました、振興勢力も台頭して来て存続自体が危ぶまれる程にね、当時の《会長》が己が威信を内外へ見せる為に計画したのが関東第一勢力《如月》への奇襲でした、その計画を任されたのが、…私です｣

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