雪華 … Snow Crystal ７

君のいる世界 …４ ページ44

桜の花びらが舞い散る日々が過ぎ、初夏の爽やかな風が頬を過ぎていく季節となった

宏光は生徒達に惜しまれながら三月末で学校を退職し、今はウチの会社でオレの仕事を手伝ってくれてる

元々パソコンが得意らしくて、経理関係の書類を仕上げてくれたりオレのスケジュール管理を一手に引き受けてくれたりと、かなり助かっていた

そして仕事の合間に二階堂や千賀、時々宮田も加わって勉強会をしてる
宏光がそれぞれに合わせて買ってきた漢字やら計算やらの問題集を解きながら、疑問点を解消してるようだった

終業後のオフィスは、さながら個人塾の様

部屋で終わるのを待ってると、時々聞こえる三人の声…

｢なぁ、勉強って楽しいモンなんだな｣
｢オレも、今マジでソレ思う｣
｢もっと早くミツに会えてたら、オレ達違ってたのかな｣

｢学ぶコトに早い遅いは無いよ、学びたい気持ちがあればいつだってスタートラインは目の前にある！焦んなくていい｣

楽しそうに鉛筆を走らせてる三人を、満足そうな表情で見つめる宏光…


帰りの車の中

ポツリと宏光が呟いた…


｢ありがとな、太輔…｣
｢ん？｣
｢オレさ、毎日がホントに楽しい｣

｢…そか、なら良かった…｣


出来るなら、本当は教師を続けさせてやりたかった

三人に勉強を教えてる宏光は、とても生き生きとしたイイ顔をしてる

零れるような笑顔で生徒達とグラウンドを駆け回っていた宏光が好きだったから…



けど、オレのいる世界は言うなれば一般とは大きくかけ離れた世界だ、教師をしている宏光が存在していい世界じゃない


だからこそ、オレと共にこの世界で生きてくことを決心してくれた宏光に感謝しか無かった



秋には、オレはこの《如月》を継ぐことになる



宏光の存在を公的に認めさせる為に、オヤジ以下四天王のじーさん達をどう説得するか…



カギは松永だ…





そして当の松永は、今ユリと一緒に京都に行っていた

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