雪華 … Snow Crystal ７

Serenade：３ ページ4

その週の金曜日、宏光は無事退院した

入院してる間に、オレは業者を使って宏光の借りてた部屋の荷物を全てオレのマンションに移していた

アイツを夜、一人で部屋にいさせるのが怖かった…

何がキッカケで、あの日を思い出すかわからない…出来るだけ目の届く所に置いておきたかった、そうすれば仮に思い出したとしても、すぐ対応できる…

本音を言えば、仕事も辞めさせたかった…

誰にも会わせたくない…
極力オレ以外の人間と接触させたくなかった

かなり自分勝手だとは思ったけど、オレは宏光のコトが心配でたまらなかった


｢はい、今日からココが宏光の部屋！｣
｢わ、すげ、めっちゃ広い！｣
｢ﾌﾌ、使ってた家具とか持って来といたから、特に困ること無いと思うよ、本とか服はひとまず箱詰めして置いてあるから、暇な時手伝ってやるから片付けしような｣

｢うん、…なあ、オレが借りてた部屋はどうしたの？｣
｢引き払った、もうココでオレと暮らすんだから必要ないだろ？｣
｢…あ、…ん、そう、だよな…｣

少し困ってるような宏光、
どうしてそんな顔するのかわからなくて、オレは少し不安になった

｢…怒ったの？｣
｢え、違う違う！…全部オマエにさせて、悪いな…って｣
｢なんだそんなコトか…別に大変じゃなかったよ、業者頼んだし、二階堂とか自分から手伝う手伝うって、も、勘弁してくれってレベルだったけどな｣

《オレにお任せ下さい！》って胸張って言うから、まあいいかと手伝わせたら皿は割るわ、水は零すわでソッコーお役御免で帰らせた

その話をすると、宏光はやっと楽しそうに声をたてて笑ってくれた

久しぶりに聞いた宏光の笑い声…
病室にいる時は、微笑む程度で…それでもオレは嬉しかったけど、やっぱり元気な宏光が好きだと思った

｢太輔の部屋は？｣
｢オレの部屋は前と同じ…んで、ココがリビング…覚えてるよな｣

｢あっ！？…コレ…｣

｢オマエんちから持ってきた…ビックリしたよ、まさかこのフォトフレームが宏光の家にあるなんてな…すげぇ嬉しかった…｣

リビングに飾った《雪の結晶》のフォトフレーム…きっと処分されてるだろうと思っていたけど、引っ越しの為に宏光の家に行った時、壁に
掛けてあるのを見て驚いた、ユリから宏光に渡した経緯を聞いて、何だかホッとした…

あの約束は、このフォトフレームがキッカケだったから…

｢今年は絶対行こうな…雪華…探しに行こう｣
｢…行きたい…太輔と一つだけの雪華、一緒に見たい…｣

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