雪華 … Snow Crystal ７

Serenade：１７ ページ18

そしてオレは…自分の身に起こったことを知った…

自分に伸ばされた複数の大きな手…鼻をつく男の汗の香りに、嫌悪を伴う恐怖を覚えた理由……

少しずつ…戻る……あの日…

複数の男の下卑た笑い声と貫かれる痛み…
《…いいカラダだ、コイツ完全初モノだな…》
《だろ？楽しませてもらったぜ…次は誰だ？》
《オレだろ》

そして…

《シンデレラなんて、この世界にいないんです…アレは美しいお伽噺…今のキミは、汚され穢れた生贄です…》


｢……穢れた…、生贄……ッ｣
｢…宏光…ッ！？｣

見下ろされ、嘲るような視線が…見える…
息…苦し……どうし…ッ…誰か……ッ…

｢…ッ、ﾊｧ…ﾊｧ…ッ、オレは…ッ汚い……っ｣
｢宏光…っ、宏光ッッ！持ってかれんなッ！オレを見ろっ！｣
｢ﾊｧ…ﾊｧ…ッ…、イヤだ…ッ…オレは汚いんだ…だから触るなっっ…汚いのが、…ッ、移る…｣
｢違うッ！汚くなんかないッ！オマエに汚いとこなんかどこにも無いッ！｣

《いい姿です、キミの愛する《藤ヶ谷太輔》は今の君を見たらなんて言うでしょうね、…穢らわしい…その言葉が一番相応しいかな…》

｢…嘘だ…、お前だっていつか言うんだ…オレのこと汚いって…穢らわしいって…言うから…ッ｣
｢宏光ッ、何でそんな…言うわけないだろっ！どうして…ッ！？｣
｢言うよっ！、オマエはきっとオレを嫌いになる…オレの汚いカラダ…っ、イヤになるんだッッ！｣


｢…なら、オレがキレイにしてやる…！｣

声と共に押し倒されるカラダ…
裂かれるシャツ…弾け飛ぶボタン…

汗の香り…、触れてくる掌…

あの時と……同じ……ッ！


｢…イヤだ触るなっっ…ヤダ離せッッッ！…イヤだッ…誰か…ッ！｣

カラダを這い回る肌の感覚が、オレをこれ以上無いほど絶望に突き落とす…

目の前にいるのが、もう誰なのかもわからない

｢イヤだ────ッ！｣

全身のチカラを振り絞り、オレは顔のないその黒い影に爪を立てた…


｢…ッッ！｣

見えたのは…その人…
そして、首筋の赤い爪痕……

｢宏光…｣
｢たい、すけ…｣

嘲りの声が聞こえる…

《キミは藤ヶ谷太輔を不幸にするだけです…
複数の男を受け入れたカラダなんて…本当におぞましい…》

《…宏光、ゆっくり…のんびり……2人で幸せになろうな…》

幸せに……なんか………────


｢…オレは、オマエを……幸せになんか……してやれない…｣
｢宏光…｣


｢もう一緒には……いられない…────｣



そのままオレは…家を飛び出した…

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