雪華 … Snow Crystal ５

RONDO：２３ ページ8

校内を華やかに彩っていた薄ピンクの花達はその役目を終え、今は目にも鮮やかな青葉がそのゴツゴツとした枝に生え茂り、柔らかな風が葉擦れの音を靡かせていた…

新学期が始まり、オレは受け持ちの2年生と毎日を楽しく賑やかに過ごしていた

｢みっくん、今日の部活楽しみにしてるよぉ！｣
｢みっくん！シュートキメたら投げチューしてね♥｣

もはやオレは生徒達の中でどの位置にいるんだろ？いちおう部活顧問なんだけど…生徒じゃないよね？？

相変わらずの《みっくん》呼びにはちょっと困ってるけど、まあ生徒達も悪気は無さそうだし、この頃の自分にも覚えがあるから大目に見ることにした

草薙センセイは、今年もオレの指導係

物腰はとても優しいけど、ちゃんと締める所は締めるというメリハリのある指導が定評で、生徒や保護者にもホントに信頼されていた

｢草薙センセイは管理職にはならないんですか？｣て聞いた時、
《私は生涯一教師で充分幸せです》とほんのり笑っていて、草薙センセイらしいな…と思った

昔も今も草薙センセイの愛称は親しみをこめて《つよポン》だ、生徒をもちろん、実はオレも密かにそう呼んでるのはナイショｗｗ

校庭に降り注ぐ春の日差しの様に、毎日が穏やかに過ぎていく…

そして今日も、オレは昼メシを校舎屋上で食べていた…メロンパンの中に挟まれた焼きソバ、甘しょっぱい風味はオレがいた頃から今も安定の人気メニュー、太輔とコレよく食べたよな…

屋上…

ココには太輔との想い出がたくさん残っていた…

笑って泣いて…ケンカして仲直りして…そしてキスをした…
オレにはどれも…一つ一つが抱き締めたいほど大切なタカラモノだった…


｢太輔…オレちゃんと頑張ってるからさ、オマエ安心していいぞ…｣

思い浮かべたその顔が…フッと違う人と重なる…

同じ顔…でも、違う人…


あの日から、TELは一度もかかってこない…

連絡を待ってるつもりは無いけど、雅喜さんに会いたいと思う気持ちがあるのもホントだった


同じ顔だから、気になるんだろうか…

雅喜の優しい話し方…穏やかな表情は、あの頃の太輔にはあまり見られなかった

オレの知ってる太輔は基本人見知りで、照れると少しだけぶっきらぼうな口調になった…オレが笑うと、いつもオレよりも嬉しそうな表情を見せてくれた

｢太輔、好きだよ…｣

午後の日差しが眩しくて…何だか涙が出そうだ…


光を遮ろうと手をかざした時、ポケットのスマホがLINEの着信を知らせてきた

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