雪華 … Snow Crystal ５

RONDO：２２ ページ7

｢オレの家も三人目のオヤジのせいでめちゃくちゃになって…そのせいで姉ちゃん、借金のカタに連れていかれるとこ松永さんが助けてくれたんです…お陰でクソオヤジからも離れること出来ました｣
｢ウチは母親がダメ家庭…オレと弟置いて帰ってこなくて…そっから親戚たらい回しされて育ってきました、バカだからおミズしか出来ないし、そこで働いてたけど騙されて借金背負わされて…払えないなら鉄砲玉やれって言われたの松永さんが止めてくれたんです｣

｢みんなスゴイな…ウチは元々如月傘下の組なんだけど、父さん関西勢力にやられて潰れちゃって…敵のヤツらに吸収されそうなトコ、松永さんが立て直してくれたんだ、今は母ちゃんが姐さんになってる……松永さんいなかったら、オレら三人とも多分ヒトの顔した獣になってると思います…｣

宮田の言葉に、二階堂も千賀も頷いていた…

｢専務、オレら専務のコトもすげぇ好きです、いつも優しいしアタマ良くてカッコイイ…尊敬て言うの？してます、だから松永さんのコト嫌わないでほしいんです、…でも、なんか変なこと言ってたらゴメンなさい…｣

そう言って、千賀がペコリとアタマを下げる

人には表の顔と裏の顔があるんだろうか…オレの知ってる松永と三人が伝えてくる松永は余りにも真逆過ぎていた…どっちが本当の松永なんだ…

戸惑う気持ちしか今は無い…

｢とりあえず、三人の話はわかったよ…だけど、僕には僕なりの想いもあるんだ…今の話を聞いたからと言って、直ぐにどうこうとはならない…悪いけど｣

思ったままを伝えると、案の定三人の顔に落胆の色が浮かんだ、でもそれだけ松永さんのコトを深く思っているんだろうということは充分に伝わってきた…

ユリもそうなんだろうか…

松永のコトを未だに愛しているんだろうか…

だけど、…《どうしても忘れられない人がいる》
その気持ちは何となく分かるような気がした


自分は一体、一日に何度その人の姿を思い浮かべているんだろう…

顔も声も…仕草も…眼差しも、涙も…


数える気にすらならない…

多すぎて…
切なすぎて……

《如月雅喜の恋人は私よ》

菜月の哀しい叫びが、耳に残っていた
今の自分の想いを告げてしまえば、彼女はどれほど傷つくだろう…


けど…

こんな状態をいつまでも続けるわけにいかない

もう、ムリだ…

僕は、あの人しか要らない…
例え太輔の残した想いが、今でもあの人を包んでるとしても…そのベールを引き裂いてでも


あの人が欲しい…

RONDO：２３→←RONDO：２１

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す