雪華 … Snow Crystal ５

Kanon：４ ページ50

龍樹は、《如月》を揺るがせないために、雅喜の影として生きることを強いられたアナタを跡目にしようと考えた…顔もそっくり、そしてアナタの存在は幸いなことに組内部にもほとんど知られていない

雅喜に万が一のコトがあれば、アナタの存在を公表して、正式に跡目としての立場に据えることを考えていたの

元々龍樹は太輔の持つ統率力や頭脳、人を惹き付ける力を知っていたでしょ、子どもの頃からアナタの家庭教師兼世話係だったから、雅喜は幼い頃からカラダもあまり丈夫では無かったから跡目としての資質に不安があったみたい…

それにあの子は姉さんに似て、物静かな優しい子だから、誰かの為に命を張るような毎日にはきっと耐えられないだろうって、龍樹は良く言っていたわ…

でも目算が狂った…

《十六夜》がどういう訳か《如月》の二人目の跡目の存在を知ってしまった…それも闘争派にね、どんなルートを使ったのかは分からないけどヤツらは雅喜が留学先にいないことまで調べあげていた

《十六夜》が跡目の二人を血眼になって探し始めた…そして遂にアナタを見つけた…

内偵に出してた人物から、太輔の周りが騒がしくなってるという報告が龍樹の耳に入ったの


このままにしていたら、きっと《十六夜》は太輔…アナタを狙うようになる…

雅喜の回復は見込めない…そしてアナタまで失ってしまったら《如月》は…いいえ、私は《如月》なんてどうでもよかった、ただ姉さんが…アナタ達の母親がどんなに悲しむだろうと思うと、いてもたってもいられなかった

姉さんね、…太輔にずっと心を残していた

一度も母親としてアナタを抱きしめてやれなかった…
同じ血を分けたそっくりな雅喜を見る度、手離した太輔が重なって、死にたいほど辛かったと思う…

病で臥せっていた時ですら、姉さんは太輔と雅喜のコトだけを思っていた

どうかアナタ達に幸せになって欲しい…

手離すコトを拒否出来なかったコトを最後の瞬間まで悔いていた…太輔に自分の命で償いをするって、延命治療も拒否してね、

生まれ変わったら、またアナタ達の母親になりたい、今度こそ二人を一緒にこの腕に抱きしめたい…って、そう言って亡くなったの…

その姉さんの想い…雅喜と太輔二人共死なせるワケにいかなかった…

だから、龍樹がアナタを海外に移すという計画に私も賛成したの…

だけど、あのクリスマス…

ソレに感づいた《十六夜》が、高速道路でアナタと龍樹の乗った車を襲った…

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