RHAPSODY:32 ページ46
この人は一体何を言ってるんだ…
必死な面持ちで再び縋り付いてくる人を不可解に感じながら、僕は向けられた顔を見返した
僕を見つめる水の膜を貼った瞳が街灯の光に照らされ、一層潤みを増しているように見えた
何でこんな顔…
まるで僕の全てを見透そうとするその表情に、言うに言われぬ不安を感じずにいられなかった
「…太輔…ッ!」
「やめて下さいッ!、僕は雅喜です」
不安は苛立ちに代わり、僕は北山さんのカラダを強く押し返した
「オマエ左手にキズあるだろッ!?高校の時、オレを庇ってナイフで切られたんだッ、結んだオレのバンダナは?左手見せてみろよっ!なあ太輔ッ!」
強引に左手を掴んできた手を、僕は反射的に振りほどいた
どうして僕そのものを見てくれないんだ…
押さえていた感情が一気に湧き上がるのを止められない
「キズなんかありませんッ!僕は太輔じゃないッ!…僕を太輔の代わりにするのはやめて下さいッ!」
発した言葉に、目の前の人が短く息を詰めたのがわかった
瞬きもせず、僕を見つめる瞳…雨粒なのか涙なのかわからない程、北山さんの頬は雫を落としていた…
「…代わりなんかじゃ、無い…」
掠れるような声が、より切なさを伝えてくる
だけど、今の僕にはその切なさが哀しかった…
「僕は雅喜です…、何があったか知りませんが、アナタは少し混乱してるんです、冷静になれば分かります…帰りましょう、このままだと風邪を引いてしまいます、送っていきます」
無いよりはマシかと着ていたジャケットを着せかけようとした時、パシッと北山さんの手がソレを撥ね付けた
「…いらない…」
「北山さん、困らせないで下さい…」
「太輔じゃないなら…何も、…いらない……」
「ソレは、…この先僕を見てくれることは絶対に無いということですか?」
俯いた顔を上げ、その人は僕の目を真っ直ぐに見つめてきた
胸が締め付けられるほどの想いが、絡まる視線に乗せられ、僕に伝えられる…
「見てるよ…オレは7年前の、あの日初めて会った日から…オマエだけ見てる…それはこの先も変わらないから……」
その後、北山さんの口許が声にならない言葉を紡いだ……
《たいすけ》
見つめる事しか出来ない僕の視界に、北山さんの細く頼りな気な背中が映る…
止まない雨…、ソレはまるで、僕の目からその人の姿を隠すように降り続いた…
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GAYASAKURA(プロフ) - こっちゃんさん» と思っております!予定通り移行になりました!宜しければ続き覗いてみて下さればと思います!コメ大感謝です! (2017年3月11日 16時) (レス) id: 0cce3636ea (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - こっちゃんさん» こんにちは!いつもコメありがとうございます!はい、かなり無理やり感ありますが、戻しちゃいましたw、ユリ姉さんのネタバレからまた色々ハプニングが起こります、元カノがちょっと…でも主要人物は《みんないい子だよ!》がテッパンなので、なんとかなるのでは (2017年3月11日 16時) (レス) id: 0cce3636ea (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - keiさん» ホントにゴメンなさい!ココから辻褄合わせのネタバレ展開になりますw、そしてそして元カノが何やら…宜しければ続き覗いてみて下さいね!コメ大感謝です! (2017年3月11日 16時) (レス) id: 0cce3636ea (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - keiさん» こんにちは!こちらこそ初めまして!ウチの藤北ちゃん気に入って下さってホントに嬉しいです、ありがとうございます!はい、ちょっとアッサリ記憶戻しすぎたかなぁと思っていますが、こうでもしないと次の展開に行けないのでもしか《??》になられてたら (2017年3月11日 16時) (レス) id: 0cce3636ea (このIDを非表示/違反報告)
こっちゃん(プロフ) - こんにちは。太輔君の記憶が戻りましたね。事故の真相や、菜月さんとの事等 解決しなければいけない事が多いので、大変だと思いますが ハピエになるために必要ですし、これからどうなっていくのか楽しみです。 (2017年3月11日 14時) (レス) id: 2a4d3f96ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:GAYASAKURA | 作成日時:2017年2月25日 13時