雪華 … Snow Crystal ５

RHAPSODY：２６ ページ40

事務所のドアが専務の怒鳴り声と共に開き、一触即発の様子で二人が入ってきた

｢勝手に見合いなど画策して、姑息なマネをするなッ！｣
｢《如月》の為です、さっさと妻を娶って次の跡目を設けて頂かないと下の者達も不安がります！｣
｢ふざけるなッ！僕は結婚する気など一切無いっ！｣

初めて見る専務の激昴してる姿に、オレら３人はどうしていいのか、ここにいていいのかも分からず、ガン首揃えてそのやり取りを聞いていた

｢なんだ、何を見ている？オマエらはさっさと自分の仕事をしろっ！サボることしかできないならチャイナマフィアに臓器ごと売り飛ばすぞッ！｣

｢は、はいッ！、申し訳ございませんッ！｣

般若の形相の松永さんに激しくドヤされて、オレらは竦み上がって部屋を飛び出た


おっかねぇ…
あの人はホントに専務と《如月》のことになるとトコトン容赦がない

お見合い…って…

｢千ちゃん、もしか専務、見合いさせられてんのかな？｣
｢みたいだな…松永さんのコトだから、外堀からガッチガチに固めて、本人の意思とか無関係のままある日いきなり結婚式とかありそうだよな｣
｢だよね、…松永さん、タブー無いもんな｣


｢そんなコトさせてたまっかよ！｣

ヒソヒソ声のオレらの話を聞いていたニカが、コッチを睨みつけてきた

｢ぜってぇそんなコトさせねぇし！｣
｢ニカ…｣
｢オレそんなんヤダッ！なあ、オレらで専務の恋叶えてやろうよ！｣
｢そりゃ、オレらだってそう思うけど、…でもどうやって…？｣


｢おい、いるか？｣

突然ドアが開いて迫力満点の若頭が入ってくる、三人共に顔が引きつっていた

｢は、はい、何でしょうか…｣
かろうじて宮田が返事をする

｢オマエら今日から雅坊…専務の行動を逐一オレに報告しろ、何時に誰とどこで会う…全てだ、いいな！｣

その命令に顔を見合わせてしまう…ソレって…

｢出来ません！そんなスパイみたいなマネ…オレやりたくありませんッ！｣
口火を切ったのはニカ

松永さんの切れ長の目元がピクリと動いた
この仕草がキレる寸前なのは経験上分かる
ソレでもニカは怯まない

｢いいか、コレは頼み事じゃない…命令だッッ！｣

言うなりニカの胸倉を掴んで締め上げて来た

｢オマエに拒否権は無い…やれ！｣
｢…ッ、どうしてそこまで…ッ？｣


｢あの人を《如月》の跡目にするのがオレの最後の使命だからだ…その為にオレは今、生きてる…そしてその為なら、悪魔にでも鬼にでもなれる…わかったら、…やれ！｣

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