雪華 … Snow Crystal ５

RHAPSODY：５ ページ19

｢雅喜さん、オレはもう…｣

アナタとは会うつもりは…、言いかけたその言葉は、唇に触れた雅喜さんの人差し指に遮られた

完全不意打ちの行動にオレは固まってしまって雅喜さんの顔を見ることしか出来ない…よっぽどオレのビックリ顔が面白かったのか、雅喜さんの口許が緩んで楽しそうな笑い声が耳に響いた

そのまま口を閉じる様に上下に唇を摘まれて…
どうすればいいのかリアクションに困ってると、少しだけ表情を真顔に戻しながら

｢その先は言わせたくないので｣…と言って指を話してくれた

｢雅喜さん…｣

｢待ちます…｣
｢え…｣
｢アナタが僕を…ホントの僕を見てくれるまで待ちます…ﾌﾌ、幸い、待つのは苦手じゃないんです！｣

ニコッと笑ってポンとオレのアタマに手を置いた

｢…好きでいさせてください…今はそれ以上は望みません｣

伝えてくれる気持ちに、オレは何も返せない…
ただ、目の前のオレを包み込むような優しい眼差しを受け止めるしかなくて…

｢…どうしてオレなんかに、そこまで…」

答えが欲しいというよりは、胸の奥にある気持ちがそのまま声に出てしまった…戸惑うオレに雅喜さんは

｢…なぜなんでしょうね、…ただ、アナタと一緒にいたいと、とても…思うんです…、今はそれしか言えないんですが……ゴメンなさい、答えになっていませんね…｣

と、穏やかな口調で伝えてくれた

…答えなんか、ないんだ…

ふと、そう思った…

誰かが誰かを好きになるのに、理由なんかない…
理由のある《好き》は、きっと《愛》には変わらない

ただ、その人が好き…


太輔と出会って、オレはそのコトを知った…

雅喜さんも、同じなんだろう…

今のオレには雅喜さんの気持ちを受け入れる余裕は無いけど、伝えてくれるその気持ちを否定することは出来なかった

解決してくれるのは、時間だけのような気がした…

｢…帰ります、お忙しいトコお邪魔してすみませんでした｣

｢いいえ、コチラこそ…僕の配慮の無さで北山さんに迷惑を掛けました…申し訳ない｣
｢オレなら大丈夫です…でも…｣

言葉の先を雅喜さんは理解してるようだった
少し頷くと

｢菜月のコトは僕が考えることです、北山さんは心配しないで下さい、お仕事頑張ってくださいね｣
と言って微笑んだ

｢ご自宅まで二階堂に送らせます｣
｢いいですよ、電車で帰ります｣
｢いえ、ウチの会社の出入りは車の方が安全です｣

よく分からない理由を告げられ《？》のオレ…

内線から直ぐに二階堂さんが来た

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