雪華 … Snow Crystal ５

RHAPSODY：１６ ページ30

｢ソコは《如月》の所有してる店なの？｣

｢全然違いますよ、最初たまたまオレが見つけて入ったんですけど、オーナーと妙に気があっちゃって、オレらの内情も知ってるんですけど全く他のお客さんと同じに見てくれます、専務とも絶対気が合うと思いますよ！ね、行きましょうよ！｣

熱心に誘ってくる二階堂の気持ちは嬉しいけど…

｢でも僕の背景が知れたら、店に迷惑かかるんじゃないのか？《如月》の跡目が来てるとか…｣

妙なウワサでも立てられたら風評被害にならないのか…

｢全っ然！さっきも言いましたけど、オレらの事もよく知ってますよ…流石に《如月》関係者とは言ってませんけど、その世界の人間だと言うのはわかってます、でもソコのオーナーってそう言う背景なんか全く意に介してなくて、その人そのものを見てるってカンジです、色々相談にも乗ってくれるし、めっちゃいい人！｣

｢ふーん、そうなのか…みんな男気のある人と知り合えたんだ、良かったな｣

そう言うと、運転しながら二階堂は満面の笑みを浮かべ、何度か頷いた

｢オレらみたいな世間からハミ出たヤツにマトモに向き合ってくれる人なんて多くないんで…専務と松永さん、んでソコのオーナー……あとはミツかな｣

ミツ……北山さん…
顔を見るどころか、その声すら聞いてない…

けど、きっと毎日、あの明るい笑顔を生徒達に向けているに違いない…あの人が今この時を幸せに過ごしてるなら、それだけでオレは…

｢ん…？でも二階堂は、北山さんと会ってるの？｣

会話の中で素朴な疑問が湧いたので聞いてみると、二階堂は《あ…》と言う表情をした

｢どうした？｣

バツの悪そうな表情が浮かび、背後からでもわ少しだけ肩が落ちるのがわかった…

｢二階堂、何かあったのか？｣

少しだけ胸騒ぎがして、僕は二階堂に聞き返した

｢…ミツを送っていった時、…なんだかアトを付けてきてるヤツがいたような気がして…バイクなんですけど…少しだけ気になったので、時々様子を見にミツの家の辺りに行ってました、でも、あの日以来特に変わったことも無いからオレの思い過ごしだと思います｣

｢そうなのか…？｣

｢あの頃は胡散臭い話も出てたから、まさかとは思うんですけど…でもミツは変わりなく元気ですよ、グラウンドで生徒に混じってボール追いかけてますし！生徒と先生、どっちがどっちか分かんないくらい馴染みまくってます！…あ、専務もう着きますよ…｣


目の前に、一軒の落ち着いた佇まいの店が現れた

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