雪華 … Snow Crystal ５

RHAPSODY：８ ページ22

なんもかんもとっぱらって…ただその人が…

｢…分かってるよ、そんなコト…｣

けど、そんな風に割り切れるもんじゃないんだ…

こんな風に揺らいでる自分が、堪らなく軽いヤツに思えてイヤだった…

黙り込んだオレに、二階堂くんはもう何も言ってこなかったけど、20分程走った時

｢なぁオレ、コーヒー買いたいからちょっとアソコの自販機で止まってもいい？｣って言ってきた

｢…？、いいよ、別に｣
｢サンキュ｣

直ぐにハザードのカチカチ音が聞こえて、車は路側帯に停められた、後ろにいた黒のバイクが邪魔な車がいなくなったと喜んだのか、加速して横を通り抜けて行った…

｢…気のせいか…｣

って、二階堂くんの呟きが聞こえた、視線は自販機じゃなくて、道の向こうに向けられてて…

｢どしたの？｣
｢ん、いや…何でもない、やっぱコーヒーいいわ、車出すな｣
｢え、イイの？｣

変なヤツ…って思いつつ、オレは後部座席から見るともなしに外に目をやってると

｢北山さん…だっけ、なぁアンタ何してる人？｣
｢オレ？オレは高校教師だよ｣
｢げっマジ？オレ世の中で一番嫌いなのセンセイってヤツ｣

そう言って心底嫌そうな顔して、ミラー越しにオレを見てきた
ちょっと傷付く…

｢ソレはどうして？｣
｢えー、オレガキの時から色んなモンからハミ出てたヤツだからなんか問題起きると全部オレのせいにされた、オレなんか学校からはクズの価値観しか持たれねぇもん｣

へへって、軽く二階堂くんが笑う…でも、その目と口許は笑ってはいなかった

｢…家庭環境とかでさ、周りは判断すんだよな…まあ、世の中ってそんなモンだから別にいいんだけど…｣

そう言ってまた、乾いた笑い声が車内に響く…
でも心が笑ってないのは明らかだった

｢そっか…二階堂くん、…ずっとイヤな目にあって来たんだな…｣
｢…仕方ねぇよ、自分でもオレの家サイアクだったって思うもんな…でも専務はオレのコト…一度もバカにした様なコト言わない、オマエは優しいよって、…優しい人は強い人だから、これからも変らなくていいって言ってくれた｣

｢そうなんだ…｣
｢初めてなんだ、そんな風に言ってくれた人…だからオレ、めっちゃ専務のコト好きなんだよな｣

優しい人は強い人…

そのまま雅喜さんに当てはまる様な気がした…
そして…太輔にも…

｢二階堂くん…｣
｢ん？もう着くよ…あ、その《二階堂くん》止めて！クソこそばゆい、ニカでいいよ！北山さんは何て呼ばれんの？｣
｢ミツ…かな｣

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