雪華 … Snow Crystal ５

RONDO：２７ ページ12

｢また繋がらない…か…｣

今日三回目の着信も、機械的な音声に遮られた…

何度掛ければ繋がるんだろう…
無意識に大きなため息をつき、僕はスマホをスーツの胸ポケットにしまった

自宅リビングの窓外に目をやる…高層階の窓からはアンバーライトに光る鉄塔が見えた…

この部屋から見える景色を、菜月は好きだとよく言っていた、キレイだと目を輝かせる菜月を、僕は確かに可愛いと思っていた

もうそんな風に思う日は来ないだろう
ゴメン…菜月…


北山さんへの想いを確信してから、僕は菜月と会って話をしようと連絡を取り続けていた

こんな話をTELや文字で伝えられるわけもなく、どうにかして会えないかと思い、何度も連絡を取ろうと試みた…だけど、最後の通話で《今の如月雅喜の話は聞かない》と突っぱねただけに、菜月が僕のTELに出ることは無かった

残した留守電も、おそらく聞いてはいないんだろう…

多分…きっと菜月は僕からの話が何なのかを予感しているんだと思う…

会うコトの先にある《別離》

一方的だと思う…
不誠実なヤツだと罵られても、菜月の怒り全てを受け入れる覚悟はあった…

僕の想いは北山さんにある…

それを自覚していて、菜月とこのまま一緒にいることは菜月にも酷なコトだと思った

菜月と別れれば、北山さんが僕を受け入れてくれるなんて甘い考えは持っていない


ただ、伝えたいと思った…

そして、伝えるためには全部をリセットして伝えるべきだと考えた
受け入れてもらえないなら、その日を待つコトも厭わない…

例えソレが先の見えない想いでも、永遠に受け入れてもらえないとしても、求める人と違う人とこの先の時間を過ごすより、余程実りがあるように思えた


どうして、こんなにもあの人を好きになってしまう…
血を分けた弟が愛した人なのに…

それとも、太輔が愛した人だからこんなにも惹かれるんだろうか……双子だから…？


太輔…オマエは許してくれるんだろうか？

オマエが、この世界から消える直前まで心を残していた人を…僕がこの先守りたいと思うコトを…

オマエを愛してると言うあの人の気持ちを、僕に向けたいと願うコトを…

あの人の全てが欲しい、と乞うコトを…



頼む太輔…答えてくれ…


窓ガラスに映る顔は紛れもなく《如月雅喜》…

けれど、あの人を強く求める気持ちは《藤ヶ谷太輔》と同じだと確信していた…


北山さん…アナタに会いたい…
もう一度、この腕に抱き締めたい…


大きく息を吐いた時、TELが鳴った

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