I wish to be your only one … Re:turn ２

Re:８０ ページ34

｢…戻れって…｣

イキナリの申し出に、オレのアタマはついて行かない

｢なんでオレ？《HAYAMA design company》には、南條さんを筆頭に優秀な設計士が何人もいるじゃん、あの人の変わりに図面を引ける人なんかいくらでも…｣

｢私達ではムリなんです、葉山先生の緻密な計算を形に表せるのはやはり葉山先生の血を引く璃久さん、…アナタしかいません！｣

真剣な表情でそう断言する南條さんに、オレは戸惑いしかない…

｢買いかぶりすぎ！オレまだ建築デザイナーとして働いたの一年だよ、あの人の感覚なんて身についてるわけないだろ、ナニ言ってんの？｣
｢いいえ、アナタの感性はやはり葉山先生の血筋を彷彿とさせます、それを誰よりもご存知なのは、葉山先生ご自身です｣
｢ちょっと待ってよ、話が見えなさ過ぎだろ…
オレのデザインなんか、あの人が知るわけないだろ？…オレ、一度も作品見せたことなんか無いし…｣

｢…いいえ、先生はご存知ですよ、璃久さんの作品は、葉山先生は一目見るだけでわかります、あの時も…｣

南條さんは、何か思い出した様に口元を緩やかに綻ばせた

｢璃久さんが前の事務所を辞めるキッカケになったコンペ…覚えてますか？｣
｢そりゃ覚えてるさ…｣

オレのデザインを盗みやがったあの先輩と言う名の下劣なオトコ…どんなに問い詰めても、｢アレはオレのデザインだ！｣ってシレッと言いやがる、結局ソイツ殴り飛ばしてクビになった

｢あのコンペの発表見た時、葉山先生はスグにコレは璃久さんのデザインだと確信していました｣
｢え？｣

｢おそらく、凡人の私達にはわからない葉山先生ならではの感性…ソレがあの最優秀作品にはあったのだと思います…一般の人には絶対に真似出来ないその感覚、それは葉山先生と璃久さんのみに通じる《なにか》なんだと思います、…速攻で葉山先生はコンペの主催者に物凄い剣幕で怒りをぶちまけてました、お前らの目は節穴か！ってね、ですがデザインを真似たと言う証拠はドコにもなく、話は打ち切られてしまいました…｣

｢親父が？｣

そんなバカな…
事務所を辞めたコトを知った親父から、一度だけ連絡があったけど、ただ一言

｢大事なモノは自分で守れ｣と言われただけだった
その言葉の意味すら理解してないオレは、一番大切な家族を守らなかった父親に｢アンタに言われるコトじゃない！｣って一層憎しみに似た想いを募らせたのを覚えていた

｢どうかお戻り下さい、璃久さんの感性は葉山先生そのものなんです、｣

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