雪華 … Snow Crystal ３

１４２話 ページ50

｢…ミツ、気が付いた？｣
｢ひろ、分かる？｣

首を声の方に向けると、心配しきったようなタマと、母ちゃんの顔が見えた…

｢タマ、母ちゃん…なんで？…オレ…｣
｢ウチの病院…ミツ、駅で倒れてさ、救急で運んだんだよ…｣
｢救急…？｣

何がなんだか思い出せない…
どうしてオレ…救急なんか…だってオレは駅で…

｢…駅に戻らないと、太輔が迎えに来てるかもしれないから…｣

慌ててベッドから飛び出たオレをタマが抱き締めるように遮ってきた

｢行かなくていい！｣
｢ひろ、落ち着いてちょうだい！ね、お願い｣

｢邪魔すんなよッ！駅に行くんだってば！｣

二人の行為にオレは嫌悪感しか湧かない、タマを突き飛ばし、焦ったオレは靴も履かずに部屋を出ようとした、

そのカラダが、後ろから羽交い締めにされて引き戻された、

｢離せよッ！オレは駅に行くんだっ！｣

｢ミツッッ！駅に行っても太輔は来ねぇよ！…もう、アイツはオマエを迎えには来ない！…オレ話しただろう？覚えてないのか？｣
｢知らねぇよそんなコトッ！離せっ！｣

もがくオレをタマは必死で止めようと腕に抱き込み、叫んだ

｢ミツッ！頼む、正気に戻ってくれ！太輔はもういない…アイツは死んだんだ！…お願いだ、現実を見てくれ…ッ｣


今、なんて言った……

｢死ん、だ…？｣

え……？、騒いでた心が、その一言でシン…と冷えていく…

｢…何言ってんの？…太輔はオレと雪の結晶見に行くんだよ、約束したんだから、変な冗談止めてくれよ｣

ホント、笑っちまう…死ぬなんて…太輔が…
そんなの…

渡された新聞…日付は１２月２５日…

｢え、ちょっと待って…ウソだろ、だってオレ…さっきまで駅で…｣

活字とそこに書いてある名前に、オレは記憶が混乱してしまった

《抗争の果ての事故》
《降雪の高速道路でのスリップで一人重症、同乗の１７歳の男子高校生死亡》

｢まつながりゅう、き、…ふじがや……たい、すけ…｣

呟いた名前は…その人だった…

｢ウソ…だ…こんなの…デタラメだ…違うッ！違うッッ！｣

腹が立って、オレは新聞をビリビリに引き裂いた、ふざけんな、そんなコトあるわけない…ッ！

｢ミツッ！…これが現実なんだ、分かってくれ！｣
｢イヤだ、イヤだ違うッ！太輔はオレを置いて行かない、迎えに来るんだ、駅に行かせて！｣

もう狂った様に喚き散らすしかなかった、
そんなの、認めない…



｢なら行きなさい、ひろ…それでアナタの気が済むなら…私が付いて行くから…｣

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