雪華 … Snow Crystal ３

１２５話 ページ33

｢ちゃんと飲めんじゃん、いい子…苦くねぇだろ？もう少し寝てろよ、多分熱下がるから…｣

なんか…口移しとか、まさか宏光がホントにしてくると思わなくって、オレは気まずさから布団をを口元まで引き上げた

宏光は、何だか楽しそうな表情でオレを見てる

｢…風邪、今のでぜってぇ移ってんぞ…｣

目線外しながらそう言うと、クスクス笑った
｢別にいいよ、ｸｽ…そしたらおソロだな！｣
って、クシャって笑う

何だよ、今日完全に宏光のペースじゃん…
アレ？…って言うか…

｢宏光、…なんで来たんだよ、オマエ…オレのコト怒ってたんじゃねぇのかよ？｣
｢…ん？…うん…｣

誤解を解くどころか、分かってもらえない苛立ちや憤りを一方的にぶつけてしまったのに…

ベッドの端に座る宏光は、少しだけ口角を緩ませ、口を開いた

｢怒ってたけど、何に怒ってんのかもう忘れた…オマエ余計なこと考えなくていいから寝ろよ、起きたらなんか食わせてやるから、その間だにオレ買い物行ってくるわ、…冷蔵庫カラっぽだし、ホント辛うじてアクエリあって良かったよ｣

｢オマエ、学校は？｣
｢ん？早退、横尾さんが上手く言ってくれてるよ、大丈夫！｣

親指立ててウインクしてくるけど…サッカー部は無断欠席とか遅刻が続くと出禁になるはずだ
それなのに…

｢ゴメンな…｣

いつもオレ、宏光振り回してるよな…
想いと行動が伴わない…

｢…なんかオマエ、今日変だな…さっきだってあんなコト…｣

少しだけ、宏光の表情が曇る…

｢…？、オレさ…なんか変なコト言ったの？｣


しんどくて…とりあえず玄関開けて…そのまま崩れ落ちたよな…

｢ん、いや何も…素直過ぎて…子ども過ぎて…いつもの太輔じゃないみたいでさ…｣

｢…いつものオレって…どんなヤツ？｣


｢ん？そだな、…オレの知ってる太輔は、いつも自信に満ち溢れてて、強気で、堂々としてる…でも…今日の太輔は甘えんぼでなんか…可愛いかも｣

｢か、可愛いッ！？｣

そんな形容詞初めて聞いた…このオレが…可愛い……？

…解熱剤効かねぇじゃん…熱上がりそ…カオ…あっちぃ…


｢ん、どした？｣
｢何でもない…｣

モゾモゾ布団に潜り込むオレに、宏光は含み笑いを漏らすと｢ちゃんと寝てろよ｣って出ていきかけた

離れる後ろ姿に、ふと不安になってしまう

｢宏光…｣
｢何？｣
｢…目が覚めても、ココにいるよな？｣


どうしても確かめたくて…聞いてしまう




｢いるよ、だから安心して寝てろよ…な？｣

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