雪華 … Snow Crystal ３

９７話 ページ4

｢《院長先生》か…そうだね……すまなかった、だけど何かあれば相談に乗るよ…北山さんはウチの重要なポジション任せられる数少ない看護師さんだから、ひろくんのコトも心配しなくていい…裕太が何やかや面倒見てるみたいだし、…さっきも私にTELしてきたよ、何があったか教えろってね、アイツはホントにもう…｣

その時のコトを思い出したのか院長先生は、可笑しそうに笑った

｢裕太くんにも感謝しています、デキの悪い息子に付き合ってもらって申し訳ないです｣

｢惹かれるのは、親子だからかな…｣
｢え？｣
｢いや、じゃゆっくり休んで…１週間は入院してもらうからね、これはドクターストップですから、患者さんには言うこと聞いてもらうよ｣

｢はい…｣

私が頷くと院長先生は満足そうな表情で部屋を出ていった



ほろ苦い私の過去…
秀司さんの申し出を受ければ、ヒロにも心配掛けずに大学行かせてやれることは分かっていた…けど、ソレは絶対出来ない…

例え命を削ることになっても、私は彼との約束を守る…



｢ユキさん、お久しぶりです…｣


あの日私を訪ねてきたのは、《松永龍樹》だった

｢…どうして…ココに…っ｣
｢ちょっとした因縁ですかね…私も驚いてます｣

メタルフレームの奥の切れ長の瞳は、昔と変わらず冷たい色を帯びていた、顔立ちが整いすぎるほど綺麗な分余計に冷徹さを増してる

｢…お話、少しいいですか？｣

離れた場所に止めてある黒塗りの車を目線で促してくる…下手に騒げばココに居づらくなる…

｢…わかりました｣



周りを警戒しながら車に乗ると、音もなく走り出す…どこに連れていかれるのか不安で堪らなかったけど、その車はマンションの駐車場で止まった

｢ユキさん、藤ヶ谷のオヤジさんトコの太輔坊とユキさんの息子さん、偶然にも同じ高校なんですよ、…ご存知でした？｣

｢…ッえ！？｣

藤ヶ谷…その名前は二度と思い出したくない名前だった

｢そうですか、ご存知無かったんですね…実は困ったことになってまして…太輔坊とそちらの坊ちゃんが、お互い心惹かれてる様なんですよ…｣

｢心…惹かれてる……？｣

｢…まるでロミオとジュリエット…ですね…自分の父親の命を奪ったヤツの忘れ形見と恋に堕ちるなんて…しかも同性同士とか…全く…滑稽過ぎて、…有り得ません…ッ！｣

苛立ちそのまま、左手側の窓に拳が叩きつけられる

その激しさに私は身を竦ませた


｢なんとかしてもらえませんか…許されるはず、ないですよね…｣

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