雪華 … Snow Crystal ３

９８話 ページ5

｢母ちゃん！色々持ってきた、こんなもんでいいかな…？｣

｢ありがと、ヒロ…迷惑かけてゴメンね｣
｢いいよ、二人だけの家族なんだし遠慮すんなって！｣

一旦家に戻って、帰り際貰った入院に必要なリストを見ながら準備を整え、また病院に戻った

母ちゃんは朝見た時とは別人みたいに元気になってて、朝ご飯がめっちゃ美味しかったと話してくれた

母ちゃんが元気だと、何だかオレも元気になる、親子って不思議な関係だよなｗｗ

｢１週間長いなぁ…なんか寝て食べてばっかとか、太りそうでヤだな｣
｢少しは肥っていいよ、母ちゃんガリだし！｣
｢えー、スリムって言ってよ｣
｢でも、腹だけ引っ込めたら？｣
｢るっさい！それセクハラ！｣

こんな会話が出来るのが楽しい、

｢…何でもいいから、早く元気になってよ…｣

そう言うと、母ちゃんフンワリ笑ってオレの頭くしゃくしゃしてきた

｢すぐ戻るからね…お母さんの帰る場所、あの家しかないから…｣
｢うん…｣

母ちゃん、薄ら目元に涙浮かべてる…

｢オレさ、勉強頑張って奨学金貰えるようにするわ｣
｢奨学金？｣
｢種類も色々あってさ、成績優秀者なら返済しなくても大丈夫なのもあるんだって、さっき院長先生が教えてくれた、だからオレ…ちゃんと頑張るからさ、母ちゃん自分のこと、もっと大事にしなよ…な？｣

｢ひろ…｣

｢んで長生きしてよ、そのうちオレがめっちゃ稼いで、母ちゃん楽させてやるから…血の繋がらないオレのコト、ホントの親以上に大事にしてくれて、オレ感謝してる…｣


…やっと言えた…


ずっと言いたかった、言わなきゃいけないって思ってた言葉…

｢オレの母ちゃんはたった一人だから、そんで世界一の母ちゃんだよ｣

｢宏光……も、アンタって子は、ホント…ッ…｣


堪えきれなくなった様に、顔を覆って泣き出した母ちゃん

｢そんな泣くようなことじゃねぇよ｣

照れくさくて、細くなったその肩に手を置いた


そして気付いた…

小さい頃はオレが泣くと、いつも泣き止むまで
ギュってしてくれた母ちゃん、

あの頃は母ちゃんが大きく思えたけど、今は…こんなにも…オレよりちっさくなってた…

｢…ひろがいてくれるから、お母さん幸せだった……｣
｢そう、ならよかった…｣

｢ひろは？…アンタは今、幸せなの？｣


幸せの定義がなんなのか…そもそも幸せを図る物差しなど存在しない

ソレは自分の心が決めることならば、この時点でオレは確かに《幸せ》だった


その人が、いてくれたから…

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