雪華 … Snow Crystal ３

１２２話 ページ30

｢横尾さん、太輔は？｣

ホームルームぎりぎりになっても来ない太輔…


あんな風にケンカ別れになったコトが気になって、オレは朝から太輔の姿を校内に探していた


朝イチの保健室にはカギがかかって、《担当不在》の札がかかってた…

ココにいないなら、太輔どこにいるんだろ…

この寒い中、屋上にいるとも思えなくてオレは横尾さんに聞いてみた

｢ああ、太輔なら体調不良で休みだよ、まだ熱あるらしくて、オレも放課後行ってみるつもり｣
｢え？太輔、熱出してんの！？｣
｢らしいよ、LINE来てた｣


熱出してるなんて…
アイツ、一人暮らしなのに…

素っ気ないほどシンプルな太輔の部屋が思い出される…

あんな所に一人ぼっちで…


太輔、何か食べてんのか？
苦しい思いをしてんじゃないのか…？

そう思うほど心配は尽きなくて、いても立ってもいられなくなった…


｢ゴメン横尾さん、オレ早退する！｣
｢え、ちょ…ミツっ！｣

驚く横尾さんをスルーして、オレはスクバを引っ掛けて教室を出た

皆とは逆方向…急ぎ足のオレを、通り過ぎる全員が振り向いていく


下駄箱の所ですれ違った人を見て、オレは思わず足を止めた

｢北山くん…？｣
｢相澤…センセイ…｣
｢何してんの？教室に戻りなさい、ホームルーム始まるわよ｣

咎めるようなその口調、
太輔とのやり取りが記憶から引き戻される

それを頭から振り払い、オレは相澤センセイの横をすり抜けるようにして自分の靴箱に向かった


｢待ちなさい、ドコに行くの？｣
｢アンタに関係ない！｣
｢…太輔のトコに行くつもり？｣
｢だったらナニ？｣

振り向きざま睨みつけたオレを、相澤センセイは眉を潜めて見つめ返してきた

｢…やめなさい、アナタ達は…何もかもが、合わなさ過ぎる…｣

噛み締めるように伝えてくる目の前のヒトに、オレは、生まれて初めて激しい《嫉妬》と言う感情を覚えた

合わない…？
自分の方が太輔に似合うって言いたいのかよ
ふざけんな…っ！


｢アンタに言われることじゃない、ジャマすんなッ！｣
｢北山くん、聞いて…っ｣
｢離せよっ！｣

引き留めようと伸ばされた手を叩き返し、オレはスニーカーを履きかえ走り出した


だって、好きなんだ…────


太輔しか要らない…
例えアイツが誰を見ていても、今のオレ達の関係が誰かを傷つけるコトになっても、構わない




オレの全てが




太輔の全てを





欲しいと叫んでる…────

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