雪華 … Snow Crystal ３

１２７話 ページ35

部屋のドアを開け中に入ると、オレはカギを掛け、ドアチェーンで施錠した


｢穢らわしい疫病神…｣

投げつけられた言葉が、頭の中で繰り返される

あの男の立場も分からず、尚且つあれほどまで憎悪を剥き出しに言われるコトが、全く理解出来なかった

あるのは、言うに言われぬ不安…


部屋全体は今も静けさに包まれ、太輔もまだ眠ってることが確認できた

買ったものを冷蔵庫にしまい、シンクの下の引き出しを開けると、調理器具が一揃い置いてある

｢…新品のまんまじゃん…｣

何を毎日食べてたんだ…大方の予想はつくけど、
このだだっ広いだけの部屋の中、たった一人で食事をしてる太輔を思うと胸が痛んだ…

小鍋にお粥を移して温める…
飲むかな…って買ってきた即席の味噌汁…

調味料も無いから、とりあえず今はそれしか出来ない…


起こそうかどうしようか迷って、太輔の部屋に入るとやっぱりまだ眠っていた

オデコに手を当てると、解熱剤が効いてきたのか玄関でヘタリこんでた時より大分下がってる…

｢…よかった…｣

はみ出た手を布団に入れようとした時、太輔の手が酷く荒れてる事に気付いた…

指先はカサ付き、所々割れてキズが出来てて、恐らく血が滲むコトもあるんじゃないかと想像出来るほど…それは痛々しかった


なんでこんな手に…？


｢オマエ、オレに何を隠してんだよ…｣

知ってるようで知らない太輔の背景…


あの男は誰なんだ？
相澤センセイは、オマエとどう繋がってんだよ
なんでこんな荒れた手してんだよ…

｢…太輔、なんで…？｣

ポツリと呟いた時、太輔の目がうっすら開いた

何度か目を細め、焦点を合わそうとしていた


｢…しんどくないか？｣

そう聞くと、掌に乗せてた太輔の手がオレの手をキュッと握ってきた

｢…ちゃんといた…｣
その嬉しそうな笑顔に、思わずオレの頬も緩む

｢お粥食うか？｣
｢…うん…｣
｢じゃ待ってろ、持ってくるから｣

支度して持っていくと、起き上がってベッドに座っていた

｢ホラ、あーん…｣
ってスプーン口に持ってくと、一瞬目をパチくりして、キョドりながらも小さく口を開けた

｢オマエ猫舌？｣
｢わかんね…｣

少しだけフーフーして口元に持っていくと、恥ずかしいのか目を反らせながら口に入れた

何度か行き来して、程なく完食

｢味噌汁あるけど飲む？｣
｢ムリ、もう入んね…｣

フルフル首振って答えんのが、なんか…笑える…



食器片付けて部屋に戻ると、俯いてた顔を上げオレを見てきた

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