雪華 … Snow Crystal ３

１０７話 ページ14

｢どっち出ます？右スか？｣
｢うん、国道どっち？｣
｢最初の信号右折から真っ直ぐです…オーライ、どうぞ！…ありがとうございましたぁッ！｣

車道に出ていくテールランプの光を追いながら、オレはつかの間の暖を取るために事務所に戻った

｢…さっみぃ…マジ冷える、あーめっちゃあったけェ…｣

事務所は暖房が行き届いてて、入った途端全身が緩みそうｗｗｗ

｢お、太輔ご苦労さん、もう上がっていいぞ、悪かったな、残業してもらって｣
｢イイっすよ社長、帰っても誰もいないし｣
｢その言葉に甘えてしまってるなぁ、申し訳ない｣

宏光と気持ちが通じあってから、オレはバイトを始めた

アイツを、Xmasに《雪の結晶》を見に連れて行ってやりたかったから…

場所は、藤ヶ谷の親父と最後に行ったあの高原…

記憶を頼りにその場所を見つけ、ギリギリ泊まるところも予約できた…勝手にどうかとも思ったけど、オレの部屋の雪の結晶のフォトを見てキレイだと言ってくれたから、ホンモノを見せてやりたかった

それに付き合って初めてのXmasだし、なんか…恋人同士？ッぽいコトして、宏光の喜ぶ顔を見たかったのもある…

交通費に宿泊代…ささやかでも、何かプレゼントも用意してやりたくて…だけど学生のオレにはけっこう大きな金額だった

誰にも頼らず自分で働いた金で、用意をしたかった


家や学校の近くだとバレてしまう…

松永には《目立つことはするな》とクギを刺されていたけど、そんなの構うもんかよ

隣町で何かいいバイトねぇかな…て探しに行った時、何の気無しに目に入ったガソリンスタンドのバイト募集

今どきはセルフが多いのに、このスタンドは未だ旧式のやり方を保っていた

家族経営で雰囲気もなんかいい感じ…もうおじいちゃんに近い年齢の社長と奥さん２人で営業してたんだけど、年には勝てないらしくて募集を掛けたみたいだった

真冬の今、外作業ばかりのこんなバイトは敬遠されるらしく応募は皆無らしくて、求人取り下げようとした時にオレが飛び込みみたいに事務所に現れたと言うわけ

高校生だからって、最初は断られたけど正直に
｢好きな人とXmas旅行行きたい！｣って話すと
奥さんの方がオレを気に入ってくれて、社長にオレを雇うコトを進言してくれた

社長は奥さんの尻に敷かれてるみたいで、奥さんの鶴の一声であっさリ雇ってもらえることになった

始めた頃は勝手も要領も分からなくて役立たずだったけど、今ではまぁイイ感じにこなしてると思う

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