雪華 … Snow Crystal

１７話 ページ18

完全にフェイント

ブッちぎられて、そのままシュート
リングに当たることもなく、キレイにボールがゴールネットから落ちて行った

｢クッソ、負けるか！｣
｢はん！やれるもんなら｣

オレの負けず嫌いに火をつけるその小生意気な表情

コイツは完璧トリッキーな技を仕掛けてくる
けど、何分か向かい合ってるとクセも見えてくる…つま先……必ず本来行く方向とは逆を向けてくるよな…読みが当たれば…

野生のオオカミみたいな研ぎ澄まされた雰囲気…

カラダは右…つま先も右…

なら左だッッ！


よっしゃぁ！ボールを奪い取り、オレは自ゴールに突っ走る、悔しいがレイアップは身長差で叩かれる、一か八か、オレはロングシュートを試みた

バックボードに跳ね返り、リングに当たる

｢入れっっ！｣

零れる…と思ったけどボールはそのままネットに吸い込まれた

｢っしゃぁぁぁっ！｣
｢やるじゃん！｣

オレを振り返った藤ヶ谷の顔に、不敵な笑みが浮かぶ

そっからはお互い本気モード

時間も忘れるほどヘットヘトになるまでコートを走り回った


｢あー、あっちぃ｣

バスケコートに座り込み、ネクタイ投げ捨て、とっくにぐしゃぐしゃのワイシャツの裾を捲りあげパタパタしながら、火照った肌に風を送る

｢ホラっ！｣
｢うわ、冷てっ！｣

ほっぺたに冷たい何かを当てられ、オレは声の主に目を向けた

｢わ、サンキュ！喉カラカラ…あーうっめぇ、生き返るわ｣
｢ぶっ、おま、じーさんかよ｣

笑いながら隣に座ってくる藤ヶ谷

優しい甘い香りの香水に、汗の香りが混じって…なんかより藤ヶ谷らしい香りになってるように思えた

｢なあ、貸しチャラになった？｣
｢あ？まーな、体力だけは褒めてやるわ、最後ボロボロだったけどな｣
｢バカ当たりめぇだろ、オレはサッカー部！｣
｢タマ追いかけんのは、バスケもサッカーもおんなじだろ？ワンコロ！｣
｢ワンコロちゃうわ！｣
｢誰にでもすぐ懐くし、ワンコロでいいだろ、鼻丸っこいし、んー豆柴か？｣
｢……フガッ、はにゃしぇ！｣

鼻摘まれて、藤ヶ谷がゲラゲラ笑う

なんかそれ見て、オレも嬉しくなった
距離…スゲェ近くなったって、思った…

笑顔…ずっと見ていたくて…藤ヶ谷の顔から目線外せなかった

｢…そんなカオ、すんな…｣
｢え…｣

視線逸らされて、オレは我に返った

どうしたらいいのか分かんなくて、｢今、何時かな…｣て、誤魔化すようにケータイを取り出す

何気なく目をやった画面…


着信１０件…全部タマからだ…

１８話→←１６話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す