オレだけの Candy Baby …３

love sweet candy … １１９ ページ29

「…わかった……会えたら必ず連絡して…」

小さく頷いたミツは、
「とりあえず局に戻ってみる」
と言って、街に入っていった…

オレを振り返ることも無く、すぐケータイを耳に当てて、行ってしまった…

「藤ヶ谷くん…」

呼ばれて振り向くと、ミサキさんがいた…

「行かせちゃったのね…」
「…あんな顔されたら…無理っすね、…オレ、アイツにはホント弱いんですよ…ﾌﾌ…より惚れてる方が…やっぱ負けますよね…」

自嘲気味に笑うと、ミサキさんは小さく微笑んだ…

「…強いんでしょ…」
「え？」
「絶対揺るがないって…自信あるから行かせたんでしょ」
「ミサキさん……」
「北山くんが選ぶのは、最初も最後も藤ヶ谷くんしかいない…ソレ知ってるから赦したのよね…」

「さあ…どうなんでしょうね…」


オマエが還るべき場所…

オレはいつまででも待ってるから…

ミツ…必ず戻れ……


オレが…その心ごと全部迎えてやるから……






太輔と別れて、局に戻ったオレ…

伊織さんへの発信履歴は相当数を示していた…



でも、返信は無い…

唯一の救いは…電源を落としてるワケでは無いと言うことだった…

出てくれるまで、掛け続けてやる…半ばヤケクソの意地で、オレはリダイヤルをタップし続けた…



…伊織さん……


浮かぶのは、オレを見つめる優しい眼差し……

オレを通して、その向こうにいるユキトさんを探していたんだろう…


触れたくても触れられない……


手離した後悔をずっと胸に残して……


……もう、いいんだと言ってあげたかった…





オレにはわかる…


ユキトさんは…なにもかも納得してた、


そして、伊織さんへの想いを少しも色褪せること無く抱いたまま、次の世界に逝ったんだ…



いや、違う…

きっと今…カレは伊織さんの一番近くにいる…


例え魂だけになっても、…だからこそ誰にも邪魔されずに傍にいるハズだ…寄り添うように…いつも静かに愛してる人を見守ってる…



ユキトさん…


どうかお願いだ……



伊織さんに会わせてくれ……




伝えたい言葉があるんだ……




そして、アナタの想いを、アナタの代わりにオレに伝えさせてください……






……それは、何十回目のリダイヤルだろう…






…数回の呼び出し音の後……








「…宏光……伊織だ…」





…求めてやまない声が、やっとオレの名前を呼んでくれた……

love sweet candy … １２０→←love sweet candy … １１８

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す