オレだけの Candy Baby …３

love sweet candy … １１１ ページ21

番組が始まった…


生放送…最終日



春に相応しい

《旅立つあなたに…》のテーマで、


卒業を迎えた学生や、親元を離れて夢の一歩を刻む子どもへの想い、反対された結婚をご両親に許してもらう為に故郷に戻る恋人達、


ソコには様々な《旅立ち》が、存在していた



一般視聴者さんからのメッセージに始まって、再現ドラマと寄せられた手紙や写真で、想いを伝えていく…


オレたちの役割は主に視聴者さんからの手紙の朗読…


演技の経験は何度かあるけど、声だけは初めてで…サクラを背景に作られたスクリーンに、手紙と一緒に寄せられた写真を映しながら朗読していく…


キスギさんからは、《変に感情入れようとしなくていいからね、そのまま読んで》とアドバイスがあり、どんなにお願いしても、事前に見せてもらえなくて、結局原稿渡されたのは本番直前だった


とりあえずざっと目を通して直ぐに本番…ホントにこんなんでいいのか不安しかない…ソレは太輔も同じだった…



朗読の為のセットで、隣り合って座る…この立ち位置が《証》へ続く…


オレが朗読するのは、遠く離れた母親から大学を卒業し就職する娘へのメッセージ…娘と二人で生きてきたお母さんの、２２年分の子どもへの愛がその手紙に込められていた…


「……アナタの頑張る姿が、負けない心が、何よりの私の生きる力となっています…私の子どもでいてくれて、本当にありがとう…」

実はオレも母親とずっと二人…、どうしたって自分とダブってしまって……手紙の向こうにある母親の想いがやたらリアルで…何度も声が詰まってしまって…文字も時々歪んでしまって…どうにか読み終えた…




太輔へのスポットに切り替わる…


太輔のは…海外でボランティアとして派遣されてる医者の恋人へのメッセージ…


「……危険な地域にあえて行くことを決めた貴方を理解できなくて、ひどいコトも言ってしまいました…けど今なら貴方の志がわかります…どうか貴方は自分の道を貫いてください…私はいつまでも待っています…貴方の生き方も含めて…永遠に…愛しています…」


オレの大好きな、キレイな声で…読んでいく…


太輔の目にもうっすら光るものが浮かんでいるようだった…





そして暗転…



「ん…」

って差し出されたハンカチ…

「…すげぇ、良かった…オレも泣きそうになった…この企画ヤバいわ…」
「…だな…歌えんのかな…」

ちょっと不安…

「あれ、伊織さんは…？」

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