オレだけの Candy Baby …３

love sweet candy … １１０ ページ20

「今日のカット、キスギに先に見せてもらったけど、想像以上にいい出来だ、視聴者の方にも温かい気持ちを持って頂けたらと思う」

「…え、全部ご覧になったんですか？」

「ん、そうだけど、…なんで？」
「あ、や…」

オレの質問が意外だったのか、伊織さんが聞き返してきた…隣の太輔がすかさずフォローを入れてきた

「いいなぁ、キスギさんオレたちにはお楽しみにとか言って、見せてくれなくて…」

「そうなのか、うん、よく纏まってたよ、変に涙を誘うような過剰な演出もしてなくて、キスギも最初はどうしようもないヤンチャくれだったけど、今はホントにいいテレビマンになってる…アイツがいれば…安心だ…」


最後の言葉…なぜだかオレは引っ掛かった…



「…伊織さん……？」
「ん？」

怪訝な表情のオレに、いつもの優しい笑顔を向け、軽く頷いてくれた…気のせいか…

「今日はよろしく頼むよ、生の《証》のフルコーラス…SNSにも反響が驚くほど入ってる、番組エンドに相応しい曲だと、今回は我ながら悦に入ってるよ…お願いします！」

オレたちの手をそれぞれグッと握って、ポンと肩を叩いてくれた


「はい、頑張ります」
「伊織さん、最後まで……絶対見ててくださいね…」


「…そうだね……さ、行きなさい、オンエアまであと一時間切ったよ…」


部屋を出るとき、何気なく振り返ったオレの目に、窓の外を見やる伊織さんの横顔が映った…


その表情は…オレが今まで見たことのない程寂しさを感じさせるものだった…






「キスギさん、まさか篠宮プロデューサーに全部見せたんじゃないでしょうね」

「まさかぁ、そんなヘマしないって、見てもらったのは最終編集前のだよ、まあダミーみたいなもん！コレも伊織おっけーでたけどね、本番用はここにある！」

そう言って、編集後のUSBを見せてくれた


「オマエ変なツッコミ入れるし、もぉヒヤヒヤしたわ」

オレの頭をグーでポカってする仕草見せて、太輔は笑った



「ゴメン…でも、なんか伊織さん、様子おかしくなかった？」
「え、そうか？」
「ん、…気のせいならいいんだけどな……」
「まあ、番組最終日だし、…やっぱり想うトコはあるんじゃないかな…」

「うん……だよな…」


そうだよな、…統轄プロデューサーだし、


それに、次の番組まで決めていってるんだもんな……



……どこかに、行っちゃうなんて…


「…え…？」

自分の行き過ぎた考えに、ハッと我に返った……



「本番２０分前！」

love sweet candy … １１１→←love sweet candy … １０９

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す