オレだけの Candy Baby …３

love sweet candy … １０６ ページ16

…ページを捲ると、そのどれもが、柔らかい表情を浮かべたユキトさんを撮していた…日常の何気ない風景の中に存在するその人を、暖かな光と愛情が包み込んでいた…


「…ユキトさんへの想いが…スゴく溢れてますね…」

当時を思い出したのか…ミサキさんは白いハンカチを取りだし、浮かんだ涙を拭いた…


「…たった一人で、誰も知らない場所で…ユキトにはこの写真が唯一…伊織と一緒にいた時間に引き戻してくれるタカラモノだったのよね…」


姿を見ることも、声も聞けない日々…ユキトさんは、どんな想いでこのアルバムを開いていたんだろう…伊織さんの傍に戻りたいと…思わなかったんだろうか…


「…このアルバム…どうしてミサキさんが持ってるんですか？」


「ユキトのご両親から、この写真を撮った人を知っていたら、その人に渡してほしいって…見てすぐわかったわ…伊織が撮ったんだって…

ご両親も一人息子のユキトを亡くしてから、哀しみが深くて…遺品の整理も出来なくてね…自宅に持って帰って、そのまま置いてあったらしいの…やっと気持ちの整理がついて、少しずつ手元に出すことが出来るようになったって…

…唯一ユキトが控えていた連絡先がアタシ…あのコ…伊織とのコトは何一つ残してなかったの…全部処分して…でもコレだけは、どうしても捨てられなかったのね…あの頃のユキトのコトを思うと……」


ミサキさんの声が震え……途切れた…


「…アルバムの中に、書きかけの手紙らしいモノが挟んであって…それもご両親から預かったの、誰宛かはわからないけど、きっとこの写真を撮った人に渡したかったんじゃないかって……コレよ…」

ミサキさんは、大切そうにバッグから取りだし、オレに渡してくれた…

「…こんな大事なもの、オレなんかが読んでもいいんですか？」
「かまわない…北山くんなら、ユキトのホントの気持ちを汲み取ってくれると思うから…」


躊躇いながら、オレはその折り畳まれた紙を開いた…


白い便箋に書かれた、読みやすいキレイな文字…



読み進む内に、胸が締め付けられて…





その手紙には…



ただひたすら大切な人の幸せだけを願い続ける


…《無償の愛》が溢れていた…





ユキトのしたコトは、多くの人には理解できないコトなのかもしれない…だけどあの時は、ユキトにとってはソレが、自分よりも大切な人を守る唯一の手段だったんだろう…


別れも覚悟で…





誰が彼を責めることが出来る…？

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