Memento ー ５

想い人 … ２０１ ページ9

「迷子になったら、必ず僕を呼んで」

自転車を押していた結永が、片方の手を出し、オレと手を繋ぎながらそう言った

「え？」
「約束…もし道に迷ったり、自分がどこにいるのか分からなくなったら、僕を呼んで、…必ず探して迎えに行くから…」

「結永…？」

真剣な結永の表情は、単に迷子になった時のことを言っているのでは無い気がした、

恐らくこの先の…オレと結永が繋いでいく時間の中で、もしお互いを見失ないかけたり、どこかではぐれたりした時の事を言ってる…

その何気ない言葉には、結永の優しさと誠実さが溢れていた

「うん…絶対呼ぶから、迎えに来て…」
「約束だよ…」

差し出された小指に、自分のを絡めていく、合わさった《指切り》にそっと結永の唇が触れた

その仕草に、胸の中…ギュッて掴まれた


「着いたよ、この家だね…大きいな…」
「うん…ドクタートモの家って、元々幾つも会社経営してる資産家なんだって、今はお姉さんが継いでるらしいよ」

「そうなんだ…僕の両親とも知り合いみたいで、なんだか不思議な縁だよね」
「結永が産まれた時の主治医なんだろ？」
「らしいね、かーさん…僕を産む時体調がかなり悪くて大変だったって聞いてる、オメガ男性の出産は命懸けになる事が多いらしいから、専門医しか担当できないんだって」

そうなんだ、ならオレは…と、目の前の人を見ながらふとそんな考えが浮かび、行き過ぎた想像にアタフタした

そんなのある訳ない！
オレが、結永の子を…なんて……///

「奏、どしたの？」

「あ、ううん何でもない…、…そう言えばオレと結永って、誕生日一緒だなって…」
話題を変えようと話を振ると、途端結永が嬉しそうな顔をした

「うん、今年は一緒にいようね、7月7日、17歳、7尽くしの記念日だね」
「そうだな、」
「星祭に行って、恋星流ししよ？あの場所で奏と初めて会ったのが7歳の誕生日だよね！…僕ね、あの日に不思議な体験したんだ」

「不思議な体験？」
「うん…また教えてあげるよ、じゃもう家に入って、また明日…、あ！それとコレ…」

スクバを探って差し出された紙

「進路指導が始まるから一先ず明日提出しろって、木村先生から」
「進路…？」
「併設の大学に行く子が殆どだけど、外部進学や留学もあるよ、奏は何か将来のコト考えてる？」

「…いや、まだ全然、何も…」


「そう？、なら良い機会かもしれないね、…じゃホントに、もう家に入って、僕、奏が戻ったの見届けてから帰るから」

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