Memento ー ５

想い人 … ２４１ ページ50

「会長、他にお手伝いする事ありますか？」
「んー、体育館の準備は大方済んでるから、あとは物品の確認くらいだね」
「はい、分かりました」
「橘さんが配布用のプリント印刷してるから、そっちの手伝いを頼めるかな？生徒会室、分かる？」
「はい！大丈夫です！行ってきます！」

緊張気味の1年生二人が、体育館から走って行った




毎年恒例の球技大会、生徒会主催だから僕、彬人、茉莉花を中心に準備が進んでいた。それに1年生の実行委員が手伝いに入る。

慣れない作業に戸惑ってる後輩達が去年の自分と重なり、懐かしく思えた

つい一年前の事なのに…と苦笑いだ

「結永、対戦表出来たぞ、こんなもんでどう？」
「わ、すごっ！」

模造紙を繋げた大きな紙には、トーナメント戦の枠が引かれ、各クラスのチーム名がアートっぽくデザインされていた。

「カッコイイなこのフォント、彬人が考えたの？」
「おうよ！すげぇだろ、もっと褒めていいぞ！」
「ハハ、自分から言うのが彬人らしいよ、色々スゴイスゴイ」
「あ？ナニその呆れ感入ったコメント、うぜぇ」
「ｸｽｯ…違う違う、彬人のセンスは僕認めてるよ、ありがとう、…デザインの方に進みたいって、おじさんに言えばいいのに」
「ハイ黙れー！オレはね、人生抗わない事に決めてんの、レールに乗っかる方がラクじゃん！？おい1年、コレそこの壁に貼っといてー、…じゃな結永、オレのノルマは完遂だからお先な」

これ以上僕と話す気は無いらしい。受け取りに来た1年生に渡すとスタスタと体育館を後にした。

…彬人、お母さんの希望を無下にできないんだろうな…
彬人の置かれてる状況なら、理解出来る

「…まだ準備残ってるのに一人だけ帰るなんて、なんなんでしょうね？」

出入口を見ながら、桜也がムッとした顔で呟く。
「彬人は頼んでおいた事は全部終わらせてるよ、それに本来僕の役目である事も代わりにしてくれてる、感謝してるよ」

やんわり諭すと、真意が伝わったのか、桜也が「すみません、失礼な事を…」とシュンとなった。

「桜也も実行委員じゃないのに部活の後も手伝ってくれてありがとう、助かるよ」
「いえ、そんな…、結永さん一番忙しいし、僕で役に立ててれば嬉しいです！」
「ありがとう、僕は体育館の見回りして帰るから、桜也はもう帰っていいよ」
「ソレ済ませました！特に問題なしです」
「そう？あ、上のギャラリーエリアも見たかな？高い位置だし、いつの間にか応援席になってて…」

「はい、勿論！」

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