Memento ー ５

想い人 … ２２０ ページ28

やったー、また結永さんと二人で居られる

その嬉しさに、つい口許が緩んでしまう、ステップを踏むようにして歩道を歩き出すと、目の前には見慣れた車が止まっていた

「…ったく、来るなって言っといたたのに…」

ムカつく思いが、歩幅をガラリと変える、絶妙のタイミングで運転席から出てきた男が、後部座席のドアを開けた、そのまま座席に腰を下ろし腹立ち紛れに目の前の椅子を蹴ると、キツい眼差しが僕を捉えた

「先に帰れって言わなかったけ？」
「社長から桜也さんを一人にしないよう申し付けられております」
「何それ…、別にいいじゃんお前が黙ってればいいことだろ？」
「あの方にウソは通じ無いことは、桜也さんがご存知でしょう？」
「ふん！…早く車出して」

もう一度椅子を蹴ると、やれやれ…と呟きが聞こえ、滑らかに発進した


「ご一緒されていたのは、藤ヶ谷コーポレーションのご子息ですか？」
「だったらナニ？」

見通されてるコトにウンザリしながら返すと、ｸｽﾘ…と忍び笑いが聞こえた

「何が可笑しいんだよっ！」

「いえ、良くもまぁ長々と初恋を手放さずにおられるものだと、感心しております、その分こじらせ具合も相当てしょうが…」
「うるさいなっ！」
「ですが、月城家としてのお相手には申し分ない方かと思われます、お血筋も良く将来性もかなり高い…、桜也さんの気持ちが報われると宜しいですね」

同情を装いながら小バカにされてる気がして、僕はムッとした

「はん！このまま久遠奏がしゃしゃり出なきゃ、僕にだって勝ち目はあるよ」
「久遠奏…ですか？」

「そうだよ！結永さんにぜんっぜん似合わないクセにいつまでも結永さんの中から出ていかない、腹の立つヤツっ！！」


「なるほど…そうですか、久遠奏、ですか…」






「奏…起きれるか？」

額に触れる指先の感覚に目が覚めた
定まらない視点に瞬きを繰り返すと、目の前にいたのは夢見た人では無かった

「…おかえりなさい、ドクタートモ…」
「ただいま、ずっと寝てたのか」
「…起きると、頭がグルグルして…」

照明の明るさに目がついて行かなくて、手を交差し遮った

「満足な食事が取れてないからな…辛いとは思うが少しずつでも食べた方がいい、出ないと好反転の前に体が持たない、…スープを持ってきた、食べよう、起きれるか？」

サイドテーブルにトレーを置き、ドクタートモが支えるように起こしてくれる、そのまま胸に抱くようにして持たれさせてくれた


「うん…」

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