Memento ー ５

想い人 … ２１８ ページ26

何度も繰り返し、とりあえずゴール下までドリブル出来るようになるのが第一目標かな…

桜也も粘り強く向かうけど、流石に体力の限界が見えてきた、
それに体育館の最終貸出時間も迫ってる、

《藤ヶ谷、余り一人にばかり貸し出せないんだからな、いいか！時間厳守だぞ！》
担当の先生からそう言われてて、終了5分前には報告に行くことにしていた

「桜也、今日はここまでにしよ、お疲れ様」
「は、はい…、も、全然着いて行けません…結永さん壁なんだもん…」
肩で息をしながら僕を見上げる顔、照明に汗が反射し上気した頬は名前の通りのサクラ色していた

「フフ…高い壁の方が、越えた時の景色に絶賛できるよ、頑張ろうな」
「はぁい…」

コートから出て床に座ると、桜也はタオルでポフポフと顔を拭き出した、予備で買ったスポーツドリンクを渡すと、嬉しそうに手に取り「ありがとうございます！」とキャップを開ける、勢いよく流し込む様子を見ながら「体育館、片付けてくるから」と言いおき、その場を離れた

二階部分の窓のカーテンを閉める、
下にいる桜也が立ち上がり、僕を見上げ手を振った

「桜也、照明落とすから外にいて」
「はぁーーい！すみません！」

やり取りしながら何気なく触れた鉄柵が微かに動いた気がしたけど、終了時間を気にしていた事もあり、そのまま下に降りていった

「担当の先生に挨拶してくる、桜也はこのまま帰ってて良いよ」
「…はい、ではお願いします」

とっぷりと暮れた空を見上げながら、職員室棟に向かう、残っていたのは担任の木村先生だった


「よし、今日も時間厳守だな、了解だ」

台帳に時間を書き込みながら、木村先生は受け取った体育倉庫の鍵をケースに収めた

「ありがとうございました、また明日お借りします」
「球技大会も近いしな、まあ無理せずやれや…あー久遠は欠席連絡が来てるからメンバー調整頼むな、学級委員長！」

特に何も表情を変えず伝える木村先生に、僕も同じ顔をするよう努めた

「…そうですか、分かりました」

奏、まだ体調戻らないんだ…
内心を悟られないよう俯き加減に返事をし、頭を下げ職員室を出ようとした

「藤ヶ谷」「はい？」
振り返った先の木村先生は、何か言いたげに口角を動かしたけど「…気をつけ帰れよ」と言った

「はい、お先に失礼します」


そして自転車を取りに行きかけた時、人影が近づいてきた

「結永さん…」
「桜也、まだいたのか？迎えは？」
「断りました、一人で帰れますもん」

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