Memento ー ５

想い人 … ２１５ ページ23

「干渉…？」
「オレにはドクタートモがいる！、何かあればドクタートモが直ぐにオレを助けてくれる！お前が口出す事じゃない！」

もっと言葉を選べたら良かったのかもしれない、けど、これからも結永の近くにいる為には、今は副作用を受け入れるしかない

言えば結永は薬を飲むなと言うだろう、何があっても自分が守ると言うだろう、…でもそれはオレの望むカタチじゃないから…

優しくされたら、きっとオレはこの状況に耐えられなくて、逃げてしまう…その果てにあるのは、屈辱的なあの《記憶》…

だから結永…頼むからもうこの事に触れないでくれ…、自分で決めた事なのに、気持ちが耐えられなくなってる、悔しさと歯痒さと、そして不安…ごちゃ混ぜな気持ちを鷲掴み、投げつけように言い放った

結永は一瞬だけ目を開き、初めて見る無表情さで「そう…」と答えた

「ドクタートモがいれば、今の奏は完結するんだね…、いいよ…」
「……ゆい…と…？」

「多分僕には分からない事が多すぎるんだと思う、干渉されるのがイヤならもうしない、…悪かったよ」

そして結永はオレの横を素通りし、離れていった

いつもならオレの少し前を歩き出すと、直ぐに振り返って笑ってくれるのに…そのまま学食を出ていった

真っ直ぐに伸びた綺麗な背中が、スローモーションの様にドアの向こうに消えていく

プツリ…と、何かが弾け飛んだ音がしたような気がした

見えていたはずの糸、それは手繰り寄せると、力なく手のひらに戻ってきた

「当たり前、だよな…」

そしてオレは、そのまま教室に戻ることなく、学校を出た






「お前ここんトコ帰ってくんの遅いけど、どした？」
「…うん…球技大会近いからさ、一年生の練習見てやらないといけないから、済んでから自主練してる…」
「ふーん…そか、まぁあんま無理しないようにな」
「…うん…大丈夫」

特に会話もなくポソポソと夕食を食べ、部屋に戻っていく結永、こんな日がもう何日も続いていた

太輔も敢えて何も言わないけど、結永の後ろ姿を視線で追う、リビングのドアが閉まるとオレに目を向けてきた

「ひろ、アイツここんトコ変だよな」
「うん、あんま笑わないし口数も減った…」

喜ぶんじゃね？と、ニカが作ってくれた好物のバナナケーキも全く手付かずで、オレは太輔と二人コーヒー飲みながら、無意識にため息を吐いた

「心当たりあんの？」
「無くはないけど…でも聞いても言わないだろ…」


恐らく《奏くん》、だろうな…

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