Memento

想い人 … ４６ ページ47

一夜明けても、昨日の気まずさが消えることなどなく、僕は着替えを済ませ階下の様子を伺いながら階段を降りた

せめてとーさんが居てくれたらいいのに…と祈りつつリビングのガラス戸から中を覗こうとした時、「おはよ、結永」と後ろから声がした

振り返ると、かーさんがいた
「おはよ、かーさん…」
「おう、」

特にいつもと変わりないかーさん…
あれ、昨日のこと怒ってないのかな…

「早くメシ食え、朝練遅刻するぞ、キャプテンが遅刻なんて有り得ねぇだろ？」
そう言って笑いながらリビングのドアを開けた

「あ、うん…でも朝練明日からだから」
そう言えば伝えてなかったかも…

「え、そうなの？…なんだ、弁当2つ作っちゃったな」
「二つ？なんで？」
と聞くと、かーさんが苦笑いしながら答えた

「いや、お前食べ盛りだし、朝練済んだら腹減るだろうと思ってさ…昼食と別に作った…」
「そうなの？」

「ｸｽｸｽ…ひろ、完全フライングだな？」
テーブルで新聞読んでたとーさんが笑いながらコッチを見た

「太輔うるさい、…いいよ、オレの昼ごはんにするから、…ホラ結永、お前はサッサと朝メシ食べろ！カフェオレでいいよな、太輔はアメリカンだよな？」
「うん頼む、ありがと」
「おけー」

サーバーのコーヒーをマグカップに入れながらパンを焼く、朝のかーさんは忙しそうだ

夕食はニカさんと一緒に作るけど、僕ととーさんの朝ご飯は基本かーさんが作る、ニカさんもやることがあるから、あまり手を煩わせたくないらしい、

《ミツはさ、なんでも自分でやろうとするから…、もっと人に頼っていいのにな》ってニカさんがよく言ってた、それはとーさんも、皆川さんも…

「二つ持ってく…」
「え？朝練無いなら荷物になるだろ？いいぞ」
「自転車だし、いい、せっかく作ってくれたのに勿体ないから」
「結永、ムリしなくていいんだぞ」

かーさんが、僕にマグカップ渡しながらそう言った
ホワンといい香りのするカフェオレには、いつも僕の好きなハチミツが入ってる、

「してないよ、…ちゃんと食べる、あの、…いつも、ありがとう…」

ゴメンなさいの代わりに、そう伝えた…
かーさんの目がちょっとまん丸になった後、柔らかく細められた

「…だってさ、良かったなひろ」
「あ？なにが？…ほら二人とも朝メシ食えって、…あ、そだ洗濯済んだかな、オレちょっと見てくるわ」って、パタパタとリビングを出て行った

その様子を目で追いかけてたとーさんが「可愛いよな…」と呟いた

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