Memento

想い人 … ３３ ページ34

「転校生なんです、止めて下さい」

オレに伸ばされた上級生の腕を掴み、制止を掛けた藤ヶ谷は、さっきまでのちょっと頼りなさげな雰囲気を吹き飛ばし、視線一つで上級生を
圧倒していた

体格その他では、この上級生は藤ヶ谷と互角…

けどなんて言うか…格の違い、とでも言うんだろうか、今の藤ヶ谷には、ただそこにいるだけで、従わざるを得ないような強いオーラがあった、

男は藤ヶ谷の顔にキツく視線を投げつけていたけど、周囲のザワつきを気にしたのか「ﾌﾝ、忌々しいヤツ」と捨て台詞を吐き、学食を出て行った

食堂を占めていた緊張感も一気に解かれ、昼休み終了時刻に近いのか、生徒たちが一斉に動き始めた

「さすが結永センパイよねー」
「カッコよすぎ！」「あの氷室もやっぱ藤ヶ谷結永には勝てないかぁ」

男女問わずの声が耳に入る
けど、当の藤ヶ谷はそんな声に何の反応もせず、出ていく上級生を目で追っていた

そして、上級生の背中が出入口から消えると、一気にまた元の柔らかい雰囲気を取り戻し、「久遠くん、大丈夫？」と心配げに聞いてきた

その顔に相手を屈服させるようなものは、一つもない、不思議な人…そう思った

「別に、何もされてないし」
「うん、良かったよ」
「…アイツ誰？」

そう聞くと、藤ヶ谷はちょっと困った表情になり「氷室司(ひむろつかさ)って言う人、3年生だよ、前の生徒会長なんだ」

「あの人なんであんなお前のコト敵視してんの？」
「え？…あ、えっとね…」

口篭る藤ヶ谷を見てると「アイツ、茉莉花を気に入って一時期ストーカーみたいなことしてたんだ、ソレを結永が止めさせたんだよ、だからアイツは結永に対して今でも敵対心丸出しなんだ」

と、また違う声が聞こえた

目を向けると、初めて見る顔の男がいる
明るく染めた髪に片耳ピアス、緩めたネクタイ、けど藤ヶ谷程ではないけど、この男もかなりの人を惹きつけるオーラがある、ただ軽そうだけど

「いいよ彬人、もう済んだコトなんだから」
「茉莉花に対しては済んでんのかもしんないけど、お前に対しては未だ炎上しまくってんだろ、事ある毎に突っかかってくるし」
「それならそれで構わない、茉莉花に何も無ければ、僕はそれでいい」
「くぅーカッコイイねー、…ﾎﾞｿｯ…昔も今も茉莉花を守れんの、お前だもんな…」


ん？最後の言葉は独り言か…？

聞こえなかったのか、弁当箱片手に人の流れに乗る藤ヶ谷、当然オレもなんだけど、不意にソイツがガシッと肩組んできた

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