Memento

想い人 … ２５ ページ26

宏光から聞いたことが気になったオレは、風呂の合間に2階の結永の部屋をノックした

「はい？」
「結永、入っていいか？」
「うん、どうぞ」

ドアを開け部屋を覗くと、「おかえりなさい、お疲れ様」と出窓に座っていた結永が笑った

「ただいま、まだ起きてたんだな」
「ｸｽ…まだ10時だよ、流石に寝ないよ」
「そだな、ま、これ以上デカくなられたらオレも困る」
「えー何それ、やっぱ息子に越されるとイヤなもんなの？」
「イヤではないけどなぁ、嬉しいような寂しいような…複雑な気分かな、有難いことなんだろうけど」
「そうなんだ…」

高校生になって、オレより10センチ近く高くなった結永、でもオレや宏光に掛けてくれる言葉は、小さな頃と変わらず、優しさと気遣いを見せてくれる、

宏光が心を尽くして結永を育ててくれた事への感謝は尽きない

そして自分の父親との関わりを持てなかったオレは、結永を通して、あの頃の親父の気持ちを理解する事が多かった

今心から思う…
もっと、ちゃんと親子で話をしたかった…と…

「新学期どう？」
「変わりないよ…幼稚部からのエスカレーターだし、みんな…仲良し…」

ほんの少しだけ、結永の表情に変化が見えた
コレが宏光が言ってた《親の勘》だろうか、それをオレも感じた

「もうすぐ17歳だもんな、勉強ばっかじゃなくていい、思い出に残る一年にしろよ」

ポン…と結永の頭に手を乗せ、クシャクシャ混ぜると「もー止めてよ」と軽く頭を振った、そしてふと真面目な表情でオレを見た

「ねぇとーさん」
「ん？」
「かーさんに初めて会った時、何か感じた？」
「え？」

なんだか…今、突拍子も無いことを聞かれた気がして、オレは結永の顔を見た

あ…ッと、とても分かりやすくキョドる息子がいる

「…あ、えっとさあのね、僕の友達がさ、ずっと会いたいと思ってた人と再会したんだけど、…向こうは全然…その友達の事覚えてなくて、オマケにちょっと…嫌われたかもしれなくてさ…ソイツ凄く凹んでるから、なんかいいアドバイスしてあげたいんだよね」

本当に分かりやすいな、オレの息子は、…こういうウソや誤魔化しが超絶ヘタなトコは宏光に似てるな…

「ふーん…その結永の友達は、再会した子に昔から何かしらの感情を抱いていたということか？」
「…だと、思う…」

「そか…、その感情が何なのかは、本人にしか分からないだろうけど、オレは宏光と初めて会った時、心ごと奪われたよ…必然を超えた出逢い、そう感じた」

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