Memento

想い人 … ４３ ページ44

そうだよ、だから別に結永の部屋で何見つけたって、《あーそうなんだ》くらいにしか思わないのに…

《も、信じられない！》って怒り心頭な風に部屋に駆け上がって、夕飯まで一度も下りて来なかった、


オレ、そんないけない事したのかな…

持ってたクッションをポフン…と軽く叩き、おデコくっ付けた

「なるほどねぇ…」と太輔が鼻をポリポリしながら、オレを見た

「なに？」

「ん？…まぁ客観的に見れば確かに男同士だけど、結永にとってひろは生まれた時から《かーさん》だから、男同士ていう感覚は無いと思うよ」
「え…？」
太輔の言葉に、オレはちょっとだけフリーズした

「《かーさん》だから、見られたくないもの、知られたくないコトがあるんだと思うけどな、フフ…確かに体は大きくなったけど、まだまだ結永は幼い面があるから、咄嗟に上手く誤魔化すことが出来なかっただけだよ」

思い出し笑いしながら、太輔がポン…てオレの頭に手を置いた

「…」
「だからさ、ひろはそんなに深く考えなくていいよ、フツーにしてな？」

オレの肩を抱き寄せ、そう話す太輔

「…これから益々、結永のコト分かんなくなるのかな」
「ん？」
「全部把握してたはずの結永なのに…、段々…オレの知らない結永になってく…」

「ひろ…」
「それが成長だって理解してるんだ、でも…」

「寂しい？」
そう…その一言が、全てを集約してる、

「オレの方が変われないんだ…、情けねぇ…」
変化に上手く着いていけない…、

「変わらなくていいよ」
「…？」
「どこまで行っても結永はオレ達の子だ、ひろが命懸けで産んでくれたオレ達のタカラモノだよ、守りたいと思うのは当然だ、でも…一つ一つ手を出して守る時期は、そろそろ卒業なんだと思う」
「卒業…？」
「そう、これからは少し離れたトコから見守る時期かな、結永の考えや判断を一先ず認めてみよ？その上で間違いがあるなら、親として修正してやればいいんじゃないかな、ま。時には強気でね！」

おどけた風に話す太輔に、ふと笑みが零れる、そしてこんな風にちゃんと軌道修正してくれる存在がいることを、有難く思った

「…うん…分かった、…ってやめぃ！」
「よし、いい子！」

アタマくしゃくしゃしてくるから、持ってたクッションで応戦したけど、ポイって太輔がそれを投げてオレをギュッと抱き締めた

「ひろはいいかーさんだよ、自信持てばいい」
「太輔…」

「んで、最高のヨメさんだよ！」

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