Memento

想い人 … ２９ ページ30

「…なにあれ？感じ悪い…」
「茉莉花も良くないよ、僕はプリンスでも無いし、ウチは名家でも無いよ、あんな風に揶揄うの止めて欲しいんだけど」
「悪かったわよ、…でも結永のお父さん、藤ヶ谷コーポレーションの代表でしょ、やっぱり凄いと思うけどな、音楽室のピアノだって、結永のおじいちゃんの寄付なんでしょ？」

ハーフアップの髪を後ろに流しながら話す茉莉花、今日も結び目には淡いピンクのリボンが結ばれていた

「凄いのは僕じゃなくてとーさんとおじいちゃん！…もうこの話止めよ、自転車置いてくる」
「はーい、また後でね」
「うん」


……

なんだよ、ナンパ仕掛けて来たクセに、アイツ彼女いるんじゃん…

《覚えてない？》とかベタな手使いやがって…

なんだかモヤモヤしながら校舎に歩いて行くと、数名の女子の群れが楽しそうに会話していた

「朝から結永センパイと茉莉花さん見ちゃった、なんかいい事ありそう」
「だよねー、あの二人が一緒にいると目立つもんね、ホントに美男美女だし、朝から目福！」
「ねぇねぇ結永センパイって、中等部の時から誰とも付き合った事ないんだって、告白してもみんな断られてるらしいよ」
「でもさぁ、茉莉花さんみたいな完璧美人が傍にいたら、他の女子なんて目に入んないんじゃない？」
「…まさかの彬人センパイとか？」
「それは無いわ、彬人センパイってβだもん、あくまで親友でしょ」
「結永センパイって‪α‬の中でも別格らしいよ、やっぱり今も‪α‬の番はΩになるのかなぁ、いいなぁ…」

そんな会話に、ついつい聞き入ってしまった自分に呆れながら、オレは靴を履き替え教室に向かった


‪α‬…β……そしてΩという言葉が、オレの頭を駆け巡る

人には、男女という第一性と第2性が存在する
その組み合わせで、ある程度の社会での立ち位置が決まる

《お父さん教えてよ、僕の性別って一体なに？》
《奏…君は…》

聞かされた真実…、ソコにあるのは…


「久遠くん、ホームルーム始まるよ、教室入ろ？」
フワリと甘い香りがして、少し高い目線に髪の長い女がいた、橘茉莉花だ。

「さっきゴメンね、結永にも怒られちゃった
、余計な事言うなって、ｸｽｸｽ…」
「あー…でもカレシならいんじゃない？」
「え？カレシ？結永が？まさか！！」

コロコロと笑い声を立て、橘茉莉花がドアを開けオレを振り返った


「私は彼女じゃない、幼馴染だから、…結永にはね、ずっとずっと昔から片想いしてる人がいるのよ」

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