Innocent … 君想う日々２

守るべき人 … ５８ ページ11

「お帰り太輔」
「ただいま、ひろ、…わ、ホントに起きて待っててくれたんだ、」

もうすぐ日付が変わろうとする時間…、一日の終わりには、やっぱり太輔の顔を見ていたくて、細々と用事をしながら待っていた

結永はとっくに夢の中…
今日は特に色々頑張って疲れたんだろう、オレに似たのか、元々赤ん坊の頃から寝付きはかなりいいけど、もう風呂の中でも欠伸をしてて、出た後ベッドに入るとソッコーで寝落ちとなった

「待ってるって言ったし」
「ｸｽ…そうだけど、ひろ夜弱いもう遅いから寝てると思ってた、でも嬉しいな」

二人で寝室に戻り、脱いだジャケット受け取ったりしながら、オレは気になってたコトを尋ねた


「…あのさ咲嶋さん、どうだった？」
「ん？」
太輔がネクタイとカフスを外しながらオレを見て、フワッと笑った

「…褒めてくれた」
「え？」
「結永…、強さと優しさ両方を兼ね備えたとても良いお子さんだって、彬人くんの初めての友達が結永なのが嬉しいって、…有難いよ」
「そうか…」

幼い結永を一人で行かせたことで、火に油を注ぐ結果になったら…と心配したけどどうやら杞憂に終わったらしい

「色々話してくれた、咲嶋会長…」
「うん…」


《妻があれほど彬人に厳しいのも、私が何一つ手助けをしなかったからだと思う、私は彬人がβでも特に気にはならなかった、寧ろβだからこそ自由に生きていけるのではないかと思ったほどでね、会社にはもう長男と次男がいる、私自身が跡取りとしてかなり制約のある人生を送らされた過去があるから、彬人には自分の思う生き方をして欲しいと思っているんだ》

《なるほど…》
《妻からも色々と話を聞いた、どうも彬人が生まれたばかりの頃、慣れない育児と彬人の体調管理に疲れていたんだろうね、相談された時に私が《βのことは分からない》と不用意に伝えた一言が、かなり精神的にダメージを与えたようだ、長男と次男の時も亡くなった妻に任せ切りで何もしなかったものでね、赤ん坊の事なんてまるで分からなくて…何の気なしに言ってしまった、妻にしてみれば後妻としてのプライドもあっただろうし、‪α‬を産めなかった負い目と言うのもあっただろう、彬人の成長を必要以上に周りと比べるようになっていった、あの時もっと違う対応をしていれば、妻も彬人も辛い時間を過ごさなくても済んだのに…後悔先に立たずを身をもって痛感したよ…》

咲嶋会長は寂しげに微笑んだ

《子どもは、色んな事を気づかせてくれる存在です》

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