Innocent … 君想う日々２

守るべき人 … ４９ ページ2

「そうなのか？」
「ええ、園長先生にご挨拶をさせようとしても、イヤだイヤだの一点張りで…、結局帰ってきたのよ、…ねぇ彬人、どうしてちゃんとお母さんに教えてくれなかったの？」

「だって…」
「だって？」

「だってお母さん…、ボクのするコト全部怒るもんっ！いつもいつも…お母さんはボクを一度もほめてくれないっ！ボクのことキライなんだっ！」

彬人の声が庭に響く
呼応するように、結永くんが目を大きく開いた

「彬人…？なんで？」
「ボク…違うから…」
「違うって…何が？」

妻がそう聞くと、彬人は私から離れ妻の顔を見た

「ボク知ってる…、ボクだけがみんなと違うの…」
「彬人、何が違うんだ？」

「ボクは《あるふぁ》じゃない、ハルにぃもリヒトにぃも、大にぃも小ぃにぃもみんな《あるふぁ》、でもボクはそうじゃない、ボクだけ…ボクだけみんなみたいに…、、出来ない…」

小さく蹲り、膝に顔を押し付けるようにして彬人が泣いていた、声を殺して…涙を見せないようにして…、いつからこの子は、こんな泣き方をするようになったんだ…

その姿は、私にはとてもショッキングな光景だった、

「彬人違うの、お母さんそんなつもりで…っ」
「お母さん教えて！、ボクはどうしたら《あるふぁ》になれるの？ボクが《あるふぁ》になったら、お母さんボクのコト好きになってくれるんでしょ？ボクを見て笑ってくれるんでしょ？」

「彬人…っ」
「ボクはボクだよ、お母さんボクを好きになってよ！一人ぼっちはもうイヤだ！！」

手を伸ばした妻にむしゃぶりつき、激しく泣き声を上げる彬人、妻も彬人を抱きしめ泣いていた、その光景を結永くんがずっと見ていた、その目からポロポロと涙が零れ出した

「あきとくんのお母さん…」
か細い声でそう呼ぶと、彬人の傍に行き宥めるようにそっと背中をポンポンと叩いてくれた

恐らく、ご両親にいつもしてもらっている事なんだろう、結永くんのご両親の真摯な態度を思い出した、

そして今朝…

《突然失礼致します、藤ヶ谷太輔と申します、結永の父親です…》

結永くんの父親は、私が尊敬して止まない人の息子さんだった…

驚きと共に懐かしいその名前に、学生時代を思い出した

「あきとくん、すごく優しいよ、あとね、皆がお外に行って片付け出来てない時、あきとくんが一人で絵本しまってくれたよ、ほめてあげて」

一生懸命、妻に彬人のコトを伝えようとする姿が、誠実で穏やかだったその人と重なった

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