Innocent … 君想う日々２

守るべき人 … ６２ ページ15

「あきとくんだっ！！」

五人で話をしていると、園庭に結永の声が響いた、園門を見るとご両親と手を繋いで入ってくる彬人くんがいた、両脇のご両親を見上げながら、楽しそうに会話してる

初めて彬人くんが笑って登園しているのを見て、オレはグッと胸が熱くなった

これまで彬人くんを間近で見ていた叶多さんも同じみたいで、「彬人くん、ちゃんと笑ってますね」と言葉を繋げた

「ちょっと行ってきます」と喜びを隠しきれない薮先生が、彬人くんを迎えに小走りで向かう

それよりもちょっとだけ早く、結永や茉莉花ちゃん、そして数人の子ども達が久しぶりに会えた彬人くんを囲んだ、彬人くんもそれにはビックリしたみたいで、すこーしお父さんの後ろに隠れるような仕草を見せた、ご両親がそんな彬人くんを優しく見つめていた

薮先生と子ども達、そして彬人くん家族、
柔らかい朝の陽射しの中、一際明るいスポットライトが当たっているように見えた

「子どもに蟠りは無縁だな…」
「そうですね、我々が心配しすぎたかもです…」

太輔と由季さんが子ども達を見ながら、のんびりとした口調でそう話してる、オレと叶多さんも、顔を見合わせ小さく笑った

そして、誰からともなくその賑やかな輪に近づいていく、気付いた彬人くんのご両親がオレ達に会釈をし、お母さんは深々とアタマを下げてくれた

彬人くんと同じ、張り詰めた雰囲気はどこにも無かった

その時、茉莉花ちゃんが走って来て叶多さんと由季さんに白い包みを渡した

「…？どうしたの、これ」
「あのねパパ、彬人くんがくれたの」
「彬人くんが？」

包みを渡された叶多さんが、彬人くんを見ると恥ずかしそうに俯いた

「まりかにプレゼントだって！開けてもいい？」
無邪気な笑顔で聞いてくる茉莉花ちゃんに、由季さんが彬人くんの両親に「いいんですか？」と尋ねた

「ええ、彬人が茉莉花さんに…と昨日妻と買いに行きました、気に入っていただけるといいのですが…」
咲嶋さんが、彬人くんの頭にそっと手を乗せ、「な？」と言うふうに顔を覗いた、それに小さく頷く彬人くん、そして「えっと…どうぞ」と言った

「ありがとう彬人くん…茉莉花、開けてみようね」
「うん！」

叶多さんが、包みを開けると手のひらサイズの綺麗なレース模様の箱に、淡いピンク色のリボンが入っていた

「リボンだー！」
「かわいいーー！」
周りの子ども達の大歓声に、薮先生もちょっと苦笑いだ


「ほら彬人…言えるね」

守るべき人 … ６３→←守るべき人 … ６１

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す