愛を彷徨う人 … 45 ページ14
「…モヤモヤは解消した…?」
四宮先生と診察室を出てくると、トモが待合室でオレを待っていてくれた
「うん…」
「そか、なら良かった…、四宮ありがとな」
「いや構わない…、北山さん、何かあればいつでも伺います、一人で不安を抱えてると体調も悪くなりやすい」
「はい、四宮先生、お忙しいのにありがとうございました」
アタマを下げると、四宮先生も笑ってくれた
「山下、北山さんを…」
「ああ、宏光送るよ、雷まだ少し鳴ってるし雨も降ってる」
そう言うと、背もたれに掛けていた上着を手に取った
手に持ってる上着は、まだ雨を含んで色が濃いままだ…、それは、オレを庇うトモの優しさの現れだった
無意識にオレは、ずっとこの人に甘えてた…
虐げられ息をすることすら虚しくて苦し日々、トモの優しさを待ち、縋っていた自分を思い出した
でも、もう…しちゃいけない…
「一人で帰る…」
「宏光?」
「雷…平気だから、強くならないと…オレの大事なもの、守れないから…」
一つ一つ…考えながら話した
誰かに守られてるだけの人生は、送りたくない
いつか、かけがえの無い命を守れるだけの強さを持たなきゃ、オレはなんの為に生まれてきたのか分からないから…
オレを見つめるトモの目が、少し逸らされまた視線が重なった
「そか…そだな……、なら、気をつけて帰れよ、風邪引くな…」
「うん…大丈夫…」
「では、ウチの傘をお貸ししますよ」
四宮先生が受付から黒い傘を持ってきてくれた
「ありがとうございます、お借りします、またお返しに来ます…」
「いつでもいいですよ」
四宮先生とのやり取りを、トモは幾分寂しげな
表情で見ていた
「ありがとう、トモ…」
「役に立てたなら良かったよ」
「一人じゃ来れなかったから…」
「そうか、…あまり余計なコトを考えるな、お前は昔から…」
そしてまた口を噤みフッと小さく微笑むと、何かを振り切るように目を伏せた
「一人で強くなろうとしなくていい…、不安な時は、誰かを頼れ、…強がりは、度が過ぎると自分を痛めつけるコトになりかねない、いいな…」
精一杯の優しさが、トモの言葉に現れていた
「うん、分かった…ありがとう…」
そしてオレは、二人を背に向けドアを開けた
見上げた空…
雨は小降りになり始めていた
雷鳴も、殆ど聞こえない
少し歩くと、雲の切れ間から薄日が差し込み始めた
止まない雨はないんだ…
「決めたのか?あの話…」
「…ああ、もう思い残すことは無い…」
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まいまい(プロフ) - 皆川さんが改心してくれて本当に良かった…2人がこのまま幸せに暮らしていってほしいです。ひろの優しさに癒されます。まだまだ続くみたいなので続きも楽しみにしています! (2020年8月6日 8時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - pochiさん» こんにちは!コメありがとうございます!アハハ、書いてる方もゾワゾワしながらポチしております、そしてあっという間の移行です笑笑、終わらない…ホントにいつも長編になってしまって申し訳ございません、宜しければ続き覗いて見てくださいませ!コメ大感謝です! (2019年7月29日 14時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
pochi(プロフ) - 目には見えないけど、もう一生消えない番の証…だから泣かなくていい…(*´Д`*)ハゥ こんなこと言われてみたい… (2019年7月29日 12時) (レス) id: 0d96846f1a (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - のこさん» 胸アツです、10周年を国立でお祝い出来たら何より幸せですねー!藤北の安定っぷりにホッとしております笑笑、14年目に改めてこのGのファンで良かったと思いました、一緒に応援しましょうね!コメ大感謝です!……あ、まもなく移行です… (2019年7月28日 20時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - のこさん» サンドさん強火キス担ですよねー、たいぴーすふるはコチラはタイムフリーでも入らないのでツイとかアメブロで確認しております、ホントに有難いことですー、濱口さんに育てられたぴよぴよキスマイが、サンドさんで羽ばたき…感涙…、オリンピック関連にも参加! (2019年7月28日 20時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:GAYASAKURA | 作成日時:2019年6月11日 18時