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『っ美怜！』
静かに声を張り上げた私に気付き、ふっとこちらを振り向く美怜。
思わず、息を飲んだ。
太陽の下で、水着姿でベッドの上に寝る美怜の姿は、どこまでも美しかった。演技で浮かべていたであろう薄っすら目に浮かんだ涙が、ポロリと彼女の頬に零れ落ちた。
「お姉、ちゃん…？」
掠れた声で私を呼んだ美怜は、そのまま急に何かに怖じ気付いたように後ろに下がった。
「やめて、来ないで、お願いだから、嫌だ、」
『美怜…？』
「いやだ、いやだ、」
狂ったように「いやだ」を連呼し始めた美怜を落ち着かせようと、私は両手を彼女に伸ばした。だが、その手を振り払うように美怜は私の前から逃げていく。
『ねぇ美怜、どうしたの、何があったの』
「離れて、私から、離れて、こないで、」
今はこれ以上近付いても逆効果だと感じ、私は美怜に言われた通りその場に止まった。美怜は屋上の端っこまで逃げると、涙目のまま私を振り返った。
「なんで、わたしなの？いつも、いつも、」
『…え？』
「みんな私にばっか、私にばっか押しつけて、」
何を、言ってるの…？
「もうむりだよ、わたしもがんばってるのに、なんでわたしだけなの、？こわれちゃうよ、こわれちゃったよ、」
美怜の目は私を向いているのに、私を見ていなかった。苦しそうに顔を歪め、ポロポロと大きな瞳から涙が流れ落ちた。
「おねえちゃんも、おにいちゃんも、わたしだけおいて、さきにいかないでよ。まってよ、」
ねえ美怜、貴女には今、何が視えているの？
「わたし、がんばったよ、がんばったよね？」
私じゃない私を見つめ、必死に何かを問いかける美怜。ここまで弱気で不安定な彼女を見るのは初めてだった。
今やるべきことは、美怜を落ち着かせることだ。
『うん、美怜は頑張ってるよ。』
「ほ、ほんと…？」
『うん。美怜は、私なんかよりずっと凄くて、美しく綺麗で、努力家だよ。』
そう言いながら、ゆっくりと私は美怜に近付く。そうすれば彼女は大袈裟に怯えることなかった。
『でもね、私は前の美怜の方が好きだったかなぁ？』
「…ぇ…？」
『さっきみたいに笑顔を取り繕ってる美怜よりも、素の美怜のほうが好き。』
いつもみたいな我儘で、自己中で、悪巧みの利く美怜の方が、さっきみたいな薄っぺらい美怜よりずっと良い。
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ハクト(プロフ) - 奏斗さん» コメントありがとう！覚えてるよ、久しぶりだね！奏斗の作品こそ文の表現が綺麗で、とても勉強になります笑 毎日更新していく予定だから、良ければまた読みにきてね！(*^^*) (2020年7月2日 22時) (
レス) id: 2aaa8e08bf (このIDを非表示/違反報告)
奏斗(プロフ) - 展開が読めないところが面白い！惹かれた！更新頑張って！(思わずタメで話しちゃったけど、覚えてないよね、ごめんなさい) (2020年7月2日 22時) (レス) id: 2650d5f3fb (このIDを非表示/違反報告)
ハクト(プロフ) - 絵が上手くなりたいさん» 完全に打ち間違えでした、ご指摘ありがとうございます！ (2020年7月2日 18時) (レス) id: 2aaa8e08bf (このIDを非表示/違反報告)
絵が上手くなりたい(プロフ) - 消防車？救急車じゃなくて？(きつく聞こえてたらすみません)夢主ちゃんいい性格してる (2020年7月2日 18時) (レス) id: e48c7240eb (このIDを非表示/違反報告)
ハクト(プロフ) - あかりさん» コメントありがとうございます！読者の皆様に楽しんで頂けるよう、今後も精進してまいりますので、楽しんで頂けたら本望です(*^^*) (2020年7月2日 12時) (レス) id: 2aaa8e08bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハクト | 作成日時：2020年7月1日 22時
