顔が好き！！【志麻】 (ページ11)

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　口を開いた志麻に気付かないふりをして、お財布からお札を何枚か抜き取って、机の上に置いて、上着を握って店を飛び出した。

　追いかけたくても、お会計とかあるから無理だろうと踏んで、すぐに足の速度を落とした。

　「…何、ムキになってるんだろう。」

　必死になって、バカみたい。私も志麻も。

　だって、告白されたときの言葉は、顔が好きでお互いいいムシ除けになると思わん？なんだもん。右手で髪をぐしゃりと握りしめた。

　「…はぁ、」

　私も顔が好きで、告白を受け入れたんだから、お互い顔と利害一致のためだけの付き合いだって私は思ってた。それ以外のことなんて考えたことも無かったけど志麻の中では違ってたのかな。

　「別れるべき、なのかな。」

　素直になれない、本心なんてお互い言ったことないような関係、終わらせた方がいいんじゃないかな。

　志麻は、顔はもちろんのこと、性格だって悪いわけじゃないし、モテる。きっと、すぐに新しい彼女だって作れるはず。

　美味しいご飯も、美味しいお酒も、いつも話すくだらない話も、全部砂を噛んだような、何とも言えない気持ちで電車に乗り込んで、家に帰った。

　「…当分は、会わないでおこう。」

　化粧を落として、ラフな服装に着替えて、今日のことを忘れたくて、いつもよりも早くベッドに入った。