WANTED (ページ20)

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地獄からの解放（桃）ページ20

シャワーを浴びる度に思い出す。

左の二の腕に出来た大きな傷を撫でる。

これは俺が自由になった大事な証。

「遅ぇんだよ！」

怒鳴り声と共に床に打ち付けられる体。

その拍子に持っていた瓶を落としてしまい、中身を盛大にぶちまけた。

瓶は無残な状態で飛び散り、手のひらには薄ら血が滲む。

「申し訳ありません！」

慌ててカケラを拾い集めるが、その手を容赦なく踏みつけられる。

押し付けられて血だらけ。

「大事な酒にこんな事してタダで済むと思うなよ？」

「申し訳ありませんっ。……船長。」

俺が乗ってる海賊船の船長は傲慢だ。

部下には全員、こんな扱いや。

何でこんな傲慢な船長の元で大人しくしてるんやろうっていつも思う。

他の海賊の所に行けばいいのに。

って、俺もやねんけど。

海賊って一度そこに所属すると、他へ行くことは難しい。

他は敵やから、そりゃそうや。

ここの船長は所属する前の勧誘時点では意味わからんくらい優しい。

それに騙されてここに所属する奴が大半。

俺もその1人。

いつか絶対逃げてやる。

そう決意しながら今日も船長の言うことに従う日々。

ある日、小さな海賊船を見つけた船長は、乗り込んでそいつらが所持しているお宝を奪うことに決めた。

あんな小さい海賊船なのだから楽勝だろうと。

もちろん俺も乗り込み、お宝を頂こうとした。

ところがどっこい、少人数にも関わらずこの海賊団は強かった。

舐めてかかっていた俺の仲間たちはズタボロ。

特に最前線で剣を振り回してる奴が尋常じゃなく強い。

「何をやっている！しっかりやれ！」

船長の怒号が飛ぶ。

そうや、向こうの船長は？

一向に船長らしき姿が見えない。

船長をやれば勝てる。

そう考えた俺は向こうの船長を探す事にした。