【銀魂】鬼と鬼神【土方十四郎】

四 ページ5

土方side









肉が削がれて骨が見えている足









皮一枚でなんとか繋がっている腕









抉られた脇腹









包帯が巻かれた両目









その包帯には滴る程血が滲んでいる









歩いた跡には血の道が出来ていた









ぼろい着物から覗く傷たちはとてもじゃねぇが目を当てられない







さっきは特に目立つ傷を挙げたが……




火傷､骨折､切り傷､突き傷､打ち傷､創痍､銃創etc…







恐らく、俺の知る限りの傷は全てついている









それで歩けているのは、不思議や奇跡なんて洒落たもんじゃなく、ただ恐怖でしかなかった









山崎「副っ……長ｯ…あれｯ…」






隣の山崎は、見るに耐えない有り様に気が動転し震えている








俺も、煙草が吸えねぇ程度には震えていた





「その姿に目を見開いた」なんて表現がくりゃァ、普通の小説ならイケメンや美少女なんかが登場するだろう









だが、俺らの前にいる「女」は、美少女なんかじゃなく、ただのバケモノにしか見えねぇ









「女」の体が傾いた









そのまま静かに倒れて、血溜まりをつくり始める








土方「……山崎、行くぞ」




山崎「へ？行くって何処に？あのバケモノ放っておいていいんですか？」




土方「そのバケモノのところだ」




山崎「ええぇぇぇっ！？！？本気ですか！？だって起きてたら殺されｯ」




土方「今のテメェの叫び声で起きなかったんだ。起きてねぇだろ」



山崎「ｯでも」



土方「真選組が怪我人おいて帰れと？」




山崎「……分かりました……」





渋々頷いた山崎を連れて、バケモノに近付く








バケモノはいくら近寄っても起きない






大量出血のせいか、それとも元々なのか、真っ白の肌に触れる







雨に打たれて冷えきっていた









不思議な感情が胸に込み上げる








その感情は、俺のよく知るものに似ていた









……いいや、勘違いか…






コイツはバケモノだ、そんなわけねぇ…









「恋」なんて、あり得ねぇ









山崎「…副長？」




土方「！…いや、何でもねぇ。行くぞ………ｯ！？」







抱き抱えた体は異常に軽かった






バケモノから滝のように流れ出る血が、黒い隊服を赤に染める






俺もコイツも雨に打たれて冷えているのに、俺とコイツの肌とが触れあっているところが熱い









色々なことに戸惑いつつ、バケモノを抱き抱えて屯所へと帰った

五→←三

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